「栄養」について知らない「栄養士」が多すぎる 残念な栄養士が信じ続ける「7つの誤解」
腎機能に障害のある人については、日本腎臓病学会はまだ「低たんぱく食を推奨する」としています。けれど、この推奨には科学的根拠があまりないことを学会自身が認めているのです。
実は、2013年10月、アメリカ糖尿病学会(ADA)は栄養療法に関する声明のなかで、「糖尿病腎症に関しては、低たんぱく質食を推奨しない」と言い切っています。
つまり、腎症であっても、タンパク質を控えることで効果はなかったと、アメリカ糖尿病学会は判断したということです。
腎機能の障害のある人には低たんぱく食という常識も変わりつつあるのです。
勉強しない栄養士たち
以上のようなことは、何も特別な話ではなく、よく勉強している医師なら誰でも知っている生理学的な事実です。私の病院の栄養士さんや、ほかのよく勉強されている栄養士さんたちも、こうした最新知識をよく知っておられ、正しい食事指導をしています。
でも、残念なことに、いまだ大多数の栄養士さんが、時代遅れの誤った“栄養学”にとらわれたままです。
日本では、栄養学のレベルが病院によってバラバラだという現状があります。現場の栄養士さんが最新知識をよく勉強していればレベルが高く、不勉強だと間違いが多いという具合に、あくまでも個人の努力に頼った食事指導がなされているようです。
これは、栄養士の教育についての認識が低いせいでしょう。
そもそも日本においては、栄養学の地位が低いように感じます。そのため、科学的に検証されていない事柄を、疑いもしないで堂々と教えてしまうのです。
欧米では栄養学の地位はもっと高く、きちんとした科学として扱われています。
人間にとっての栄養とは何か、生理学的にきちんと事実を解明し、病気との因果関係を統計学的に調べてから事実として採用しているのです。これらは「人間栄養学」という分野で、医学部でも基礎知識としてしっかり教育しています。
これに対して、日本の栄養学の現状は寂しい限りであり、そもそも「人間栄養学」そのものが学問として存在しません。
短大や専門学校の養成課程を卒業すれば「栄養士」の資格を得られてしまうのが実態です。さらに、4年制大学の栄養学コースを出て、簡単な国家試験(2017年の新卒合格率92.4%)をパスすれば、「管理栄養士」になれてしまうのです。
どちらの場合も教育内容は、数十年間ほとんど変わっておらず、新しく解明された科学的な事実もあまり教えられていないようです。
これでは、日本の栄養学は欧米から取り残されてしまいます。
日本と欧米とで、栄養学の地位の差が象徴的に表れているのは、医学教育における態度の違いということなのです。
日本の栄養学には、多々、問題があります。非常に多くの間違った古い常識を信じているのが現状ですが、そのために、「正しくない食事」が広められてしまいます。
1日も早く、欧米並みに科学的な最新知識を学び、栄養学の教育現場に届けてほしいものです。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら