日本人に多い「現金払い」は本当に愚かなのか

広がるキャッシュレス決済の利点と盲点

そこで政府は、2016年10月にクレジットカードの加盟店に対してセキュリティ対策を義務付けるなどの措置を盛り込んだ「割賦販売法の一部を改正する法律案」を提出し、国会で可決されました。2018年6月までに施行される本法案では、クレジットカードの偽造防止に効果的といわれる決済端末のIC化、カード加盟店が決済時に顧客のカード情報を保持しない「非保持化」に対応したシステムの整備、情報漏えいに関するマニュアルの配布などを定めています。

いつまでも現金主義には頼れない?

このように、今後はキャッシュレスを取り巻く環境は著しく改善・充実していくと考えられます。また、インターネットショッピングや仮想通貨の拡大などは、むしろキャッシュレスでなければモノやサービスを買えない世界も予見させます。日頃の買い物のほとんどをキャッシュレス決済で済ませる時代も、そう遠くないはずです。

その変化にうまく適応するうえでは、私たち消費者側もマインドを変えることが大切です。そこで最も重要なのが「お財布からおカネを出すシーンを体験しなければ、支出を実感できない」という思考からの卒業でしょう。

現金払いでは、支払うたびにお財布に入っている現金が減っていくのを目で見ることができます。現金が自分のもとから離れていくシーンを目にすることで、使った実感を得られます。この実感は「ちょっと使いすぎたな」「今月はそろそろ節約しないと」と、消費行動をコントロールする抑止力にもなります。

これに対してキャッシュレス決済は、おカネを使うときに現金の流れを目で見ることはありません。クレジットカードの利用明細やインターネットバンキングのウェブ通帳、あるいはそれらの情報を連携できるウェブやスマートフォンの家計簿などに表示される数字の情報のみで、おカネの流れを把握することになります。

ビジュアルで直感的に理解するのと、数字で論理的に理解するのとでは、おカネの使い方や管理で求められる思考や行動様式がまるで違います。当然といえば当然のことですが、いざ自分が家計を管理するうえでこの違いを理解し、うまくコントロールするのは意外と難しいのではないでしょうか。

たとえば筆者自身も、忙しさを理由にウェブの家計簿にログインするのを怠るうちに、クレジットカードの利用額が思いのほか膨らむことがありますし、家計の相談に来る方でも、月初に生活費の予算額を現金で封筒に入れ、使うときはその封筒から現金を取り出して使う方法で、長年の赤字から初めて脱却できることもあります。しかしキャッシュレス決済がより広がった際には、現金主義に頼りすぎると家計管理が難しくなるおそれもあります。

さらに広がっていくキャッシュレス決済の現状、あるいはこれから起こりうる変化を知り、家計管理への意識を変えていく備えも、これからは必要でしょう。

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