日本人に多い「現金払い」は本当に愚かなのか 広がるキャッシュレス決済の利点と盲点
費目別では、おもに被服・履物、家具・家事用品、光熱・水道、教養娯楽、食料の購入方法が現金からクレジットカードや電子マネーにシフトしています。洋服や靴、家具などは比較的高額な買い物になることもあり、もともとクレジットカードで支払う機会が多かった費目でもありますが、ネットショッピングの拡大などでキャッシュレス決済が増えたのかもしれません。一方で、家事用品や食料は1回当たりの購入額が比較的少額ですが、キャッシュレス決済による購入の金額、割合ともに5年間で大きく増加しました。
これには、スーパーやコンビニなどでのキャッシュレス対応が広がったことも影響していると考えられます。たとえば総務省の「家計消費状況調査」によると、電子マネーを利用した人がいる世帯の割合は2010年の27.4%から2014年の40.4%と増加しています。
この内訳を主な支払先別でみると、スーパーは6%から11.1%へ、コンビニは4.6%から8.3%へと伸びています。これは、支払先として最も多い交通機関での利用の伸び(15.3%から18.7%)を上回る勢いです。さきの「全国消費実態調査」とは別の調査ですので、因果関係を単純に説明はできませんが、キャッシュレス決済の環境の広がりが、買い物のスタイルを変える一因になっている可能性を示唆しているとはいえるでしょう。
日本は現金派がまだまだ大半
とはいえ、これらの数字は日本人の買い物がまだまだ現金主義に偏っていることも表しています。先述の総務省「全国消費実態調査」によれば1カ月当たりの消費支出に占める現金決済は、2009年の26万7119円(88.8%)から2014年の24万1604円(82.5%)と減少しているものの、いまだに大半であることがわかります。
これはマクロで見てもほぼ同じことがいえます。経済産業省のまとめによると、民間消費支出に占めるクレジットカードや電子マネーによるキャッシュレス決済額の割合は約18%で、残りの約8割は現金決済が占めています。実はこの水準は国際的にみて低く、韓国54%、中国55%、アメリカ41%の半分にも届きません。
その要因の一つとされているのが、インフラの未整備です。
日本政府は2014年からキャッシュレス化に向けた取り組みに着手しており、安倍晋三政権の「日本再興戦略」には2020年までにクレジットカードを中心とした電子決済の環境整備を進めることを掲げています。これは東京オリンピック・パラリンピック競技大会で訪日する外国人を見据えた内容が中心ですが、各店舗でクレジットカードを使用できる旨の表示を促進する、商店街や観光地でのクレジットカード等の決済端末の導入を促進するなどの対応策は、日本人の買い物の利便性も向上させるでしょう。
インフラ整備で特に強調されているのが、セキュリティ対策です。日本クレジット協会の調査では、クレジットカードの不正使用被害額は年間約141億円(2016年)に上り、2013年以降は増加しています。こうした状況下では「クレカは怖いから」と現金主義にとどまる人が多くても無理はありません。
実際に内閣府の「クレジットカード取引の安心・安全に関する世論調査(2016年)」によると、クレジットカードを積極的に利用したいと思わない人の割合は57.9%と約6割を占め、その理由には「日々の生活においてクレジットカードがなくても不便を感じないから(55.4%)」に次いで「クレジットカードの紛失・盗難により、第三者に使用されるおそれがあるから(41.3%)」「個人情報などがクレジットカード会社や利用した店舗などから漏えいし、不正利用されてしまう懸念があるから(35.4%)」が挙がっています。
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