対照的に想起されるのは、55億円以上もギャンブルにつぎ込んだ、あの大王製紙の東大卒の御曹司です。四国の田舎から自家用機で東京の塾に通うほど裕福に育てられれば、金銭感覚もかくなるものかと世間の注目を浴びました。仕事面では大変に有望だったらしいですが、とてつもなく裕福すぎた彼が身に付けた金銭感覚は、彼を懲役4年の実刑判決に、つまり刑務所行きの身分に陥れるものでした。
同じリッチマンでも、両者の金銭感覚には雲泥の開きがみられます。土光氏の家庭環境は製紙会社の御曹司、井川氏ほど裕福でなかったという要因も考えられますが、人が身に付ける金銭感覚は、家庭環境だけで決定づけられるものではないようです。
子供の金銭感覚は、自然には身に付かない
私は成人になってからもずいぶん長い間、金銭感覚を学ぶ必要など考えたこともありませんでした。収入に見合った絶対に必要な支出があり、時々のぜいたく費、冠婚葬祭費のほかは、臨時出費や将来に備えて貯蓄に回すのが、万人に共通したおカネの使い方、つまり金銭感覚だと思っていたのです。
ある時期まで、私が見聞きできた人や家庭はどこもそうでした。そして序々に世間が広まるにつけ、人によって金銭感覚が違うことを知り、あきれたり驚いたりしたのです。10万円の収入に20万円を使う、しかもそれがぜいたく費や遊興費だったりする破滅型の人が存在するのをみて、本当に驚きました。支出の優先順位が常識人からみるとまるで逆で、それが金銭感覚の違いなどと言われると、表現が美しすぎると違和感を抱きました。いつの日か他人に迷惑をかける場合が多く、それはほとんど犯罪に近いにおいのするものでした。金銭感覚の違いについて、私が最初に遭遇した体験でした。
金銭的に堅実な家庭で育った人には、おのずと常識的な金銭感覚が身に付くものだと思っていましたが、現実は、家庭環境だけで解決する問題ではなさそうです。大金持ちの家で育った人でも物欲が全然なくて、交際費もケチでひたすら貯蓄が趣味という人を何人か知っています。こちらは他人にさして迷惑をかけるものではありませんが、収入をはるかにオーバーするぜいたくな生活や、ブランド品に囲まれないと生活できなくなった人も何人もみてきました。その末路は一様に悲惨です。
以上の例は、家庭環境が豊かでない環境に育つと、おのずとやりくり上手な金銭感覚が身に付き、裕福に育つとその金銭感覚はどんぶり勘定、というのでもないことを示しています。
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