最強の官僚体制が芽を摘む地方経済の活性化 中央集権型では人口増や規制緩和は望めない

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地方創生と東京一極集中の是正を推進したものだが、ここでも中央官庁の意図する方向に沿った地方経済活性化を交付金の力によって推進して行こうという姿勢が見え隠れする。安倍政権が打ち出している景気対策としての財政出動は、いまや28兆1000億円(未来への投資を実現する経済政策)にまで膨れ上がってきている。

景気動向が支持率と密接に結びついていることを熟知しているからだが、安倍首相はこうした経済政策の財源を「財政投融資」に求めるという新方針を打ち出して注目されている。財政投融資といえば、小泉政権時代に郵政民営化とセットで改革に踏み切り、一時はほとんど廃止の方向性に動いていた。

それがアベノミクスの時代になって、リニア中央新幹線の全線開業前倒しに使われるなど、再びその残高が増えつつある。しかも、「確実な償還が見込める事業への投資」という建前がある財政投融資を、人工知能やIT事業といった採算の見通しが不透明な事業の資金に回そうとしているわけだ。

確かに財投は国の予算に赤字計上されないため「基礎的財政収支(プライマリーバランス)」から外れた資金であり、財務省の懸念もクリアできる。とはいえ、未来への借金であることに変わりはない。

ちなみに、最近になって地方自治体が積み立ててきた「基金」が注目されている。全国の総額で21兆1000億円に達しており、バブル期の水準に匹敵する。この積立金が経済財政諮問会議などでも問題視され、積立金が多額になっている自治体などへの交付金は制限すべきだという意見まで飛び出している。

人口減少は補助では改善しない!?

森友学園にしても、加計学園にしても、気になるのは「あくまでも中央政府主導で、その指示に従って地方も資金を拠出する」という仕組みだ。加計学園では、地元の今治市が最大で96億円の補助金を出すことを議会で決議している。

わずか15万人程度の人口しかない今治市にこれだけの資金があったら、あえて獣医学部を誘致しなくても、もっと将来的に成長が見込める業種や会社の誘致ができるのではないかと考えてしまう。行政だからできる博打だが、民間企業からはなかなか出てこない発想ともいえる。

言うまでもなく、日本の地方行政のシステムは、地方交付税交付金と呼ばれる「補助金行政」によって、中央政府が地方行政をコントロールするという仕込みになっている。以前よりは、国家予算全体の占める割合が減少したものの、現在でも社会保障費(32兆5000億円、2017年度予算、以下同)、国債費(23兆5000億円)に次いで地方交付税交付金(15兆6000億円)が一般会計の構成比率で第3位になっている。

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