「人生で一番大切な保険」を知っていますか? 「子どものためだから」と生命保険に入る前に

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答えは、1の「奥さんが再婚して専業主婦を続ける」か、2の「奥さんが働いて一家の暮らしを支える」でしょう。3はちょっとありえない話です。

よく「保険は家族への愛情」という宣伝文句を目にします。しかし、この宣伝文句は、実は、無言のうちに「3を勧めているのと同じこと」とも言えます。最近の男性はこんな人はだいぶ少なくなったと思いますが、「俺が死んだ後は、十分なおカネを残してやるから絶対に再婚するな! 俺のことを一生想い続けて生きろ!」というニュアンスがあるようにも思えます(笑)。

つまり、若い夫婦であれば、旦那さんが亡くなった後の長い人生のすべてを保障するという必要はなく、「数年間、何もしなくても食べていける分」が用意できれば十分でしょう。

もちろん、とはいっても子どもが独立するまでの期間の一定程度の保障は必要でしょうが、「子どもが小さいから」というだけでほかの要素を何も考えずに無条件に高額の生命保険に入るのは、よくよく考えたほうがいいと思います。

「申請すればもらえるおカネ」の制度を把握する

健康保険と公的年金だけの話をしましたが、ほかの社会保険も同様です。もし介護保険がなければ、介護にかかる費用はすべて負担しなければなりませんし、失業した場合でも雇用保険に入っていればこそ、当面の生活がしのげるのです。

そして、これらにかかる保険料はサラリーマンの場合、すべて給料から天引きされていますから、否応なしに負担しているわけです。だとすれば、これらの社会保険はフルに利用しなければ損です。まず、公的な保険制度にどんなものがあるかを調べることが先で、それでも足らないという部分があれば、初めて民間の保険への加入を考えるべきなのです。

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それに公的保険は民間の保険会社と違って、制度の目的が収益を上げることではありません。それどころか、保険料だけではなく、税金だって投入されていますから、受益者であるわれわれの費用対効果は決して悪くありません。優先順位としては、まず公的な社会保険を活用し、それで不十分な場合にのみ、民間の保険会社を活用すればいいでしょう。

問題は、多くの人が社会保険の種類と仕組みをよく知らないことです。それにこうした社会保険は、ほとんどが申請しないと受け取ることができません。

結果として、有効に活用できる制度がありながら、それを知らないというのはとてももったいない話です。これらの多くは、年金事務所や住んでいる市町村の窓口等で聞けば教えてくれます。自助努力でさまざまなリスクに備えることは基本ですが、その前にせっかく自分たちが負担している社会保険料によって受け取ることができるおカネを知っておくことはさらに重要ではないでしょうか。

大江 英樹 経済コラムニスト、オフィス・リベルタス代表

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おおえ ひでき / Hideki Oe

大手証券会社で25年間にわたって個人の資産運用業務に従事。確定拠出年金ビジネスに携わってきた業界の草分け的存在。日本での導入第1号であるすかいらーくや、トヨタ自動車などの導入にあたりコンサルティングを担当。2003年から大手証券グループの確定拠出年金部長などを務める。独立後は「サラリーマンが退職後、幸せな生活を送れるよう支援する」という信念のもと、経済やおカネの知識を伝える活動を行う。CFP、日本証券アナリスト協会検定会員。主な著書に『自分で年金をつくる最高の方法』(日本地域社会研究所)、『知らないと損する 経済とおかねの超基本1年生』(東洋経済新報社)などがある。

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