「つぶやきながら歩く」と不調が消えるワケ 「ウォーキング」×「客観視」が心に効く

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さて、この大峯千日回峰行は大変に過酷な修行でしたが、みなさんにお勧めする歩行禅はそのエッセンスだけをすくいとって実用化したものですから、ハードさは何一つありません。

詳しいやり方は後半でご紹介いたしますが、まず大枠だけを簡単にお伝えしましょう。歩行禅は、以下の3ステップから成る“心のエクササイズ”です。これを毎日続けることで、心身の調子を整える効果が得られます。

【ステップ1】懺悔の行――「ごめんなさい」を唱えながら歩く

【ステップ2】感謝の行――「ありがとう」を唱えながら歩く

【ステップ3】坐禅の行――瞑想して、いまの自分と向き合う

「ウォーキング」と「客観視」の効能

歩行禅の大きな柱は、文字どおり「歩く」こと、つまりウォーキングです。ウォーキングにより、幸福感をアップさせる働きのある「セロトニン」という脳内ホルモン(神経伝達物質)の分泌量が増えることをご存じでしょうか。このセロトニンが不足すると、うつ病や不安障害、不眠症などの不調を招くことが知られています。

さらに、ウォーキングに付随した「ごめんなさい」「ありがとう」「いまの自分と向き合う」という一連の思考作業(=瞑想)が、自分自身や、自分が置かれた状況を客観視する訓練になります。

怒り、苦しさ、つらさ、悲しさといった感情に襲われるのは生きているうえで避けられないことなのですが、いつまでもそのネガティブな感情にとらわれていると、光にあふれた幸せな人生からはどんどん遠ざかっていくことになります。

お釈迦様は、『法句経』という経典のなかで次のようにおっしゃっています。

「ものごとは心に導かれ、心に仕え、心によって作り出される。もし人が汚れた心で話し、行動するなら、その人には苦しみが付き従う。もし人が清らかな心で話し、行動するなら、その人には楽が付き従う。あたかも身体から離れることのない影のように」

このように、人生の「幸せ」や「不幸」というのはすべて自分の心の持ち方次第なのです。何か嫌なことがあったとき、心の汚れやネガティブな感情に素早く「気づき」、さっと「手放す」ことが重要なのですが、そのために役に立つのが、前述した「自分を客観視する視点」です。

私たち人間は、放っておくとどうしてもネガティブな感情に引きずられてしまいがちです。しかし、一歩引いた目線で懴悔と感謝をする時間を設け、自分自身の心や置かれた状況を俯瞰する習慣をつけることで、ストレスに強いタフな心を育てることができます。

歩行禅は、それを目的とした心のエクササイズであり、人生のプチ修行であるというわけです。

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