「成長できる」「成長できない」企業の大きな差 失墜する名門とは明確に違う5つの共通点

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(2)社内外への並外れたコミュニケーション

2つめの特徴は、いずれの社長もコミュニケーションに膨大な時間と努力を注いでいることが挙げられます。社内外を問わず、密なコミュニケーションを大切にしています。

ポイントの一つは「消費者と対話できること」。対話とは、消費者の行動を売り上げデータなどから探り、分析して、商品やサービスに反映させることです。もちろん、外部とのコミュニケーションだけではなく、従業員とのコミュニケーションも欠かせません。

いちはやくインターネットで不動産情報を提供し、「ネットで部屋探し」を常識にした功労者・LIFULLの井上高志社長は、インタビューでこう語っています。

「昔の製造業、メーカーならBS(貸借対照表)に載る資産や資金を重視していました。しかし、われわれの事業は工場も原材料も必要なく、『人』だけが資産です。『人』はBSにもPL(損益計算書)にも載りません。けれど、人が最も重要なリソースですから、そこに注力するのは当たり前です」

1人の人材から、どれだけの意欲と熱意を引き出せるか。トップ1人のリーダーシップではなく、組織全体で社員の力を引き出そうとしていることも、成長企業の大きな特長です。

社長の驚嘆するような努力

中小企業のM&A仲介に特化している日本M&Aセンターは2017年3月期に売上高190億円と、過去5年で3倍以上に伸ばしました。同社は、社員の平均給与1400万円超と、給与水準が極めて高いことでも知られます。

この好業績を支える基盤として、三宅卓社長は綿密な「計画」を挙げます。驚くべき点は、計画を練り上げるまでに、社長が膨大な時間をかけて社員とコミュニケーションを重ねていることです。

たとえば2015年の4月からスタートした中期計画は、前年の6〜8月で三宅社長が大枠を作り、そこから半年をかけて、社長自らが社員と合宿ミーティングを繰り返してすり合わせを行い、練り込まれました。

「前回の中期計画をスタートする際、『この数値計画が達成できたとき、27人が昇格しています』と社員に話しました。昨年これが達成できて、ぴったり27人昇格しました。来年、彼にこういう教育をして、その下に何人入れてと、一人ひとりに関して詰めているのでまったく狂わず、業績を達成したら27人昇格できていたと。それくらいマンパワー計画も織り込んで、精緻なビジョン作りと計画作り、アクションプラン作りをしている。それを幹部以下、全社員が完全に共有しているのが当社の強み、私のやり方だと思います」

成長を支える陰に、社員一人ひとりとコミュニケーションを図る、社長の驚嘆するような努力があるのです。

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