あの映画の靴を実現させたナイキ「秘密工房」 自動で靴紐結ぶ「ハイパーアダプト」開発秘話
そんななか、ビアーズは女性エンジニアとして注目を集めつつある。もちろん彼女は、スポーツシューズの世界、あるいはナイキで重要な地位にある唯一の女性ではない。だが、彼女の職場が女性だらけでないのも事実。スニーカー業界、そしてそれを作る文化は、極めて男性的だ。それだけにハイパーアダプトのような注目プロジェクトを成功に導いた功績は大きいと、スニーカーの歴史をたどる展覧会を企画したエリザベス・セメラックは言う。
「伝説的なスニーカーは、男性サイズしかないことが多くを物語っている」と、セラメックは言う。ビアーズは、「伝説的なスニーカーのなかでも、最も困難で、最も話題の部分を手掛けた。すごいことだと思う」
将来的には、もっと手頃な価格のモデルができて、妊婦など靴ひもを結ぶのが難しい人たちの役に立つようになってほしいと、ビアーズは考えている。「さまざまな理由から靴ひもを結べない人は多い。こういう人たちは、毎日靴を履いたり脱いだりするのに20〜30分かかる。それを助けられる意味は大きい」。
いろいろな人の靴ひもの結び方
ハイパーアダプトの開発を手掛けるようになって以来、ビアーズはいろいろな人の靴ひもの結び方が気になって仕方がないという。長時間の運動や立ち仕事のあとは、足がむくむことが多いから、それに合わせて靴ひもも調整したほうがいい。そうしたデータを細かく記録にとっている。
ビアーズの夫オリバー・ヘンリチョットもナイキのデザイナーだが、2人の共通の趣味はクルマ。ヘンリチョットはアマチュアレーサーでもある。ビアーズはそのマネジャー役を務めているが、いつか自分でもレースに出てみたいと言う。「今までもずっと、男ばかりの世界で競争してきたから」。
(執筆:Katherine Rosman記者、翻訳:藤原朝子)
© 2017 New York Times News Service
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら