あの映画の靴を実現させたナイキ「秘密工房」 自動で靴紐結ぶ「ハイパーアダプト」開発秘話

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2005年、ハットフィールド(現デザイン部門トップ)とパーカー(現CEO)は、このシューズを実際に作ると決断。ハットフィールドはビアーズを主任エンジニア/プロダクトマネジャーに抜擢した。

スノーボード用シューズのプロトタイプ(写真:Dan Cronin/The New York Time)

とはいえ、ビアーズは当時まだナイキに入って日が浅かった。それにほかのプロジェクトも担当していたから、開発はそう簡単には進まなかった。このためファンは当面、映画に出てくるシューズの限定レプリカ「ナイキマグ(Nike Mag)」で満足しなくてはいけなかった(その売り上げはマイケル・J・フォックス財団に寄付された)。

ところが「リアルに靴ひもが自動的に締まるシューズを!」という熱狂的なファンの声を聞き、ハットフィールドは2014年のNBAオールスターゲームで、2015年までに完成させると発表。事実上、マクフライの開発を何よりも優先すると社内にメッセージを送った。「意外な方法で物事を進めるのは、珍しいことじゃない」とハットフィールドは言う。

驚いたのはビアーズだ。ハットフィールドのインタビューをネットで読んで、このシューズがナイキでも「ファストトラック(優先プロジェクト)」であることを知った。パーカーに最終的なプロトタイプを提出するまでの時間は5週間しかない。「ティファニーはたいへんな立場に立たされた」と、ハットフィールドは語る。

ハイパーアダプトには内蔵センサーが仕込まれている(写真:Dan Cronin/The New York Time)

ハイパーアダプトには内蔵センサーが仕込まれていて、シューズに足が収まると、靴ひもを調整するメカニズムが起動する。土踏まずのところに小さなコンピュータがあるような感じだ(実際そうなのだが)。ナイキが大々的な宣伝をかけたこともあり、ハイパーアダプトは発売されるや否や大ヒット。価格は720ドルだが、猛烈な人気で品薄ぎみになっている。

クールなだけじゃない用途

ナイキは長年、プロのアスリートたちと提携してきたが、近年はテクノロジーも前面に押し出している。「クールな最新技術を積み込んでいるだけでなく、履く人に周囲にインスピレーションを与えるパワーをもたらすスニーカーができた」とハットフィールドは語る。

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