「エジプト観光」には今行っても大丈夫なのか 10月には成田―カイロ便が再開するが…

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一方、エジプトの観光地は国家の重要な収入源を守るために比較的厳重な警備が敷かれている。 ハルガダの事件などは観光産業に打撃を与えようとするイスラム過激派の意図が明確であり、ほかの観光地も要注意といえるだろう。

IS系武装勢力の活動はこれまで、シナイ半島北部など比較的限られた地域にとどまってきた。ところが、一連のコプト教徒を狙ったテロは、従来のIS系武装勢力の活動領域を大きく越えている。カイロなどナイル川周辺地域の都市部への進出を示す動きとして警戒する必要がありそうだ。

「デモに参加すればすぐに投獄される」

ムスリム同胞団の元メンバーが証言したところでは、同胞団主流派の非武装路線に不満を持つ若手のメンバーらがIS系やアルカイダ系の武装組織に流れたり、シリア内戦に参加したりした動きがあったという。シリアやイラクでISは劣勢になっており、メンバー帰還の動きが活発化してエジプトの国内情勢に影響を与える可能性もある。

エジプトではムバラク政権崩壊時、強権的な支配から解放された市民が歓喜に沸いた。だが、現在のシシ政権はムバラク大統領と同等か、それ以上の強権的な治安対策を敷いているといわれる。

カイロ市内では、人々が大勢集まるイスラム教の金曜礼拝に前後して、ショットガンを構えた警官隊の乗った車両が走り回っている。「デモに参加すれば、すぐに投獄される。怖くて自由に政治的な発言もできない」(市民)と、閉塞感は強まっている。経済的にも通貨のエジプト・ポンドが大幅に下落して、輸入品を中心に物価が高騰。大規模な反体制デモが起きないのは、強権支配を続けているのが理由で、将来的には不満が再び爆発しかねない。

エジプトは目下、政治的に困難な局面にある。悲惨な内戦が続くシリアや武装勢力が群雄割拠するリビアの混乱を目の当たりにした国民の間では、シシ大統領の思い切った治安対策を評価する人も少なくない。

エジプト政府や国民の多くは、観光業の復活を願っており、訪れた観光客を満面の笑顔で迎えてくれるだろう。日本人も観光面でエジプトを支援したいところである。ただ、観光に際しては、こうした政治や治安の動向を少しでも理解し、最新情勢の入手に努める必要がありそうだ。

池滝 和秀 ジャーナリスト、中東料理研究家

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いけたき かずひで / Kazuhide Iketaki

時事通信社入社。外信部、エルサレム特派員として第2次インティファーダ(パレスチナ民衆蜂起)やイラク戦争を取材、カイロ特派員として民衆蜂起「アラブの春」で混乱する中東各国を回ったほか、シリア内戦の現場にも入った。外信部デスクを経て退社後、エジプトにアラビア語留学。ロンドン大学東洋アフリカ研究学院修士課程(中東政治専攻)修了。中東や欧州、アフリカなどに出張、旅行した際に各地で食べ歩く。現在は外国通信社日本語サイトの編集に従事している。

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