「エジプト観光」には今行っても大丈夫なのか 10月には成田―カイロ便が再開するが…

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7月14日早朝には、日本人にも人気の階段ピラミッドの近くで治安車両に武装勢力が銃弾を浴びせ、警官5人が死亡した。

ただ、カイロ市内は名物の渋滞が変わらず起きている。40度を超す日もある酷暑の中、民衆の生活は変わりなく続いている。

「日常生活は何の問題もないです。タクシーやメトロ、乗り合いバスに乗ったりして、普通の生活を送っています」と、エジプト在住の日本人女性はこう淡々と話す。「暑さのせいなのか、エジプト人たちはデモをやる気もない感じだと思います。大きな暴動、デモにつながる気配はないです」。

武装勢力の活動はどうなっているのか?

とはいえ、情勢は把握しておいたほうがいいだろう。不気味な武装勢力の活動が続くエジプトの治安情勢で注目すべきなのは、①政権の正統性をめぐる政治勢力間の争い、②「イスラム国(IS)」などのイスラム過激派の動向、③強権姿勢を強める現政権に対する市民のデモ――の3つ。最初の2つは、いずれもイスラム組織が絡む宗教に根ざした問題であるものの、分けて考えたほうがいい。

ここで政争の原因をちょっと振り返ってみよう。エジプトでは強権的な支配を30年も続けたホスニー・ムバラク大統領を退陣に追い込んだ民主化要求運動「アラブの春」の政変後、イスラムの教えを政治や社会の中心に据えようとする「ムスリム同胞団」が政権の座に就いた。

ところが、同胞団が担ぎ上げたムハンマド・モルシ元大統領は、不慣れな政権運営から国民の不満が集まり、軍部がクーデターで政権を強引に奪取。反発するムスリム同胞団を支持する人たちの座り込みデモを2013年8月に武力で鎮圧して1000人近い死者を出したことから、軍出身のアブドルファッターフ・シシ大統領率いる政権とムスリム同胞団が今も激しく対立している。

国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチは報告で、「無差別かつ意図的な武力行使は最近の歴史の中で、1日のデモ参加者の死者数としては最も大きなものの一つである」と説明し、中国の天安門事件を上回る死者が出た可能性があると指摘している。

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