船の「盲点」を突くサイバー攻撃が増えている ハッカーが海運業界にもたらす脅威は甚大だ
2017年6月にデンマークの海運・石油大手モラー・マースク<MAERSKb.CO>のITシステムを直撃し、世界中で大ニュースとなったサイバー攻撃は、ナビゲーションに関わるものではなかったが、テクノロジーに依存し、相互につながる海運業界にハッカーがもたらす脅威を浮き彫りにした。同攻撃は、世界中の港務に障害を起こした。
eLORANを推進する取り組みは、同システムを自国の安全を守る手段として捉える各国政府が主導している。信号を送受信する基地局ネットワークの構築や、無線航法が当たり前だった何十年も前に造られた基地局の改修には、大規模な投資が必要となる。
「GPSの父」として知られ、その主な開発者である米国人エンジニアのブラッド・パーキンソン氏は、バックアップ・システムとしてeLORAN装備を支持してきた1人である。
「eLORANは2次元で、局地的で、精度で劣るものの、全く異なる周波数で強力な信号を発する」と、元米空軍大佐であるパーキンソン氏はロイターに語った。「意図的な電波妨害やなりすましへの抑止となる」
海図用紙はほとんど使用されなくなった
サイバー専門家は、GPSや全地球航法衛星システム(GNSS)の問題点は、2万キロ以上離れた上空から送信される弱い信号にあると指摘。広く入手可能で安価な装置で妨害することが可能だという。
第2次世界大戦中に考案された地上系電波航法システム「LORAN」を改良したeLORANの開発者は、GPS信号よりも平均で推定130万倍も強い信号を発するため、妨害するのは困難だとしている。妨害するには、強力な送信機と大規模なアンテナ、そして大量の電力が必要になり、容易に検知できるという。
海上保安当局者によると、サイバー攻撃の脅威は、衛星システムに切り替える船舶が増えた過去10年で着実に増加。船員のあいだで従来のスキルが失われ、海図用紙はほとんど使用されなくなった。