船の「盲点」を突くサイバー攻撃が増えている ハッカーが海運業界にもたらす脅威は甚大だ

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「あくまでも私見だが、われわれはGNSSやGPSに頼り過ぎている」

こう語るのは、P&Oフェリーズで安全管理責任者を務めるグラント・ラバサッチ氏だ。「良いナビゲーションというのは、クロスチェックできるシステムであり、独立した2つの電子システムをもつにこしたことはない」

韓国海洋水産省のリ・ビョンゴン氏は、同国政府が2019年のeLORANの試験稼働に向け、基地局3つの建設に着手していると明らかにした。その後、基地局の数を増やしていく計画だ。だが、西方沖にある江華島の住民の反発に遭っているという。

「基地局建設には、約13万2200平方メートルの土地が必要だが、島民は高さ122─137メートルのアンテナ設置に強く反対している」と、リ氏はロイターに語った。

米下院は7月、運輸長官にeLORANの基地局建設を許可する条項を含む法案を通過させた。

「この法案は上院に送られる。われわれは法制化されることを期待している」と、eLORANを支持する米非営利団体のダナ・ゴワード氏は述べた。「(トランプ)大統領がこの条項に署名するのに何ら問題はないとみている」

ジョージ・W・ブッシュ、オバマ両大統領の政権時にもeLORAN建設は約束されていたが、実現には至らなかった。だが今回は機運が高まっている。

コーツ米国家情報長官は5月、今後数年で通信衛星システムへのサイバー攻撃の脅威が世界的に高まると上院の委員会で指摘。

「GNSSやGPSへの妨害能力が高まる可能性が非常に高い」と同長官は語った。

ロシアの「eChayka」計画は頓挫

ロシアは、海上交通路ができつつある北極地方でeLORANの一種である「eChayka」という名のシステム開設を目指していたが、現在、その計画は頓挫している。

「われわれにそのようなシステムが必要なのは明らかだ」と、ロシアの「インターナビゲーション・リサーチ・アンド・テクニカル・センター」のワシリー・レドコズボフ氏は言う。「だが、eChaykaとは別の課題がある。(ロシアは)現在、財政的機会にあまり恵まれていない」

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