小島秀夫は世界のエンタメをどう変えるのか クリエイターを取り巻く環境は激変した<下>

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コジマプロダクションはゲームクリエイター小島秀夫が率いるクリエイティブスタジオ。「From Sapiens to Ludens(「人類」から「遊ぶ人」へ)」をスローガンとして、2015年12月、東京にて発足。現在、最新作「DEATH STRANDING(デス・ストランディング)」をソニーインタラクティブエンタテインメントと連携して制作中。世界中のルーデンスにいまだ誰も体験したことのない「遊び」を届けることを信念としている(撮影:梅谷秀司)

テクノロジーも進化してグラフィックも映画並みになり、顔のシワや、目の色、髪の毛などのディテールも表現できるようになりました。キャラクターは記号ではなく、人種、民族、年齢、性差などの個性を持つようになりました。思想や宗教、世界観もグラフィックで伝えられるようになりました。でも、ゲーム性の根本はずっと変わらない。向こうから攻撃してきた敵を倒す、という原理は変わっていないのです。そこから次のゲームのレベルに進むことがいまだにできていない。これは大きな課題だと思います。

次の新作「DEATH STRANDING」で、その課題に対するひとつの答えを出したいと思っています。

――ゲームの爽快感はシューティングにあるのでしょうか。

アクションゲームとシューティングの相性がいいのは事実です。アクションゲームのすごいところは、多くの説明をしなくても、画面の中のプレーヤー(人物の場合も、乗り物の場合もあります)を自分の分身として直感的に認識させることができることです。コントローラーの操作で、画面の中の自分の分身が動く。特にFPS(ファースト・パーソン・シューティングゲーム)やVRとの相性がいいのです。映っている映像が、そのまま自分の見ている視界であるからです。

シューティングゲームの背後にあるのは「向こうが撃ってきたから撃ち返す」「やられたらやり返す」という行動原理です。なぜ敵を倒さなければならないのか、自分の行動は正しいのかどうか、という問いかけを立てたとしても、爽快感に負けてしまう。

このことをつねに考えなければ、ゲームは今のままです。現実にはできないことをリアルに体験できるのがゲームです。そこには「やってはいけないこと」も含まれます。それを疑似体験することで、なぜやってはいけないのか、なぜできないのかを考えさせるところまで、ユーザーを連れていかなければならない。小説や映画は、まさにそういう機能を持ったメディアです。ゲームにもそれは可能だし、そうならなければならないはずです。

「専用ゲーム機」はなくなる

――ゲームプラットフォームはどう変化していきますか。

近い将来、間違いなく「専用ゲーム機」という形態はなくなるでしょう。プラットフォーム自体がバーチャルなものになり、スマートフォンやタブレット、PC、大型のモニターやテレビを問わず、すべての端末に「ゲーム」を飛ばしてくれるようになるでしょう。そこまでいくと、もうゲームという言葉ではくくれない別の業態になっているかもしれない。ゲーム制作で培った「ゲーム性」がナビゲーションや、サービス、介護や教育などとつながって生活に密着していくでしょう。

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