小島秀夫は世界のエンタメをどう変えるのか クリエイターを取り巻く環境は激変した<下>

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すでに、映像コンテンツがそうなりつつありますよね。かつてはテレビ局が制作したドラマや番組をTV受像機という専用端末で視聴しなければならなかった。映画も映画館にいかないと観られなかった。でも、今はそんな制約はない。Netflixやアマゾンなどで配信されているコンテンツは、スマホでもPCでも観ることができる。どの端末であってもいいわけです。

映画館もなくなるかもしれない。将来的にはタクシーに乗ったらモニターに自分の好きなコンテンツが映り、トイレに行くと続きが映ったりして、モニターを持つ人がいなくなる時代が来るかもしれない。そうなると自分専用のAIアプリが必要になってくるんですよね。

AIはクリエイターにはなれない

――AIのインパクトが大きそうですね。

「まもなくAIがゲームの開発をサポートするようになる」(撮影:梅谷秀司)

まもなくAIがゲームの開発をサポートするようになると思います。うちのスタジオでも若い人たちに「プログラマーはいらなくなるぞ」と脅しています。それどころかスタジオそのものがなくなる可能性だってあります。

では何がなくならないのか。それは企画者(クリエイター)です。AIの時代になっても企画者は必要なんです。続編や、万人受けする企画ならば、AIが得意でしょう。ゲームに限らず、映画でも小説でも音楽でも、ビッグデータを用いてユーザーの行動や嗜好を解析すれば、ヒットする作品はできるでしょう。すでにヒットした作品やシリーズ作品に近いものならば、AIで可能です。

しかし、「誰も考えつかなかった」作品、作家性のある作品は、人間の頭からしか生まれません。アイデアやインスピレーションやイマジネーションを基に、どういうものを作りたいかをAIに説明する企画者は必要です。逆に言えば、その部分でもAIに負けるようであれば、人間はいらなくなる。誰のためのゲームであり、作品であるか、人間のイマジネーションは何のためにあるのか。そういうことを考え続け、自分自身はクリエイターであり続けたい。そのためにも、そういう人や環境や時代を作っていきたいですね。

ゲームや映画に限らず、これからのエンターテインメントを取り巻く環境は激変します。そこで重要視されるのは、技術でも資本力でも、政治力でもありません。やはりクリエイターのアイデアや感性、創造力、実行力が問われる時代がくると思います。

前編:コナミを辞めた小島秀夫が語るゲームの未来

前田 佳子 東洋経済 記者

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まえだ よしこ / Yoshiko Maeda

会社四季報センター記者

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