コンビニ3社のフライドチキン、「熱戦」の構図 食べ応え重視、味のバリエーションも拡大へ

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競合も一目置くファミチキは、まさにファミリーマートにおける横綱級の商品だ。Lチキと同じ骨なしチキンで、「サイ」と呼ばれる鶏の腰に当たる部位を使用し、サクサクッとした衣の食感に特徴がある。昨年6月には10周年を迎え、現在までの累計販売数は10億個を突破。20~30代男性から圧倒的な支持を受けている「王者」なのだ。

「かつてコンビニで販売していたチキンといえば、ドラムという脚部分の骨付き肉が主流だったが、食べにくいという声があった。そこで骨がなく手軽に食べられる商品を開発しよう、というのがファミチキ誕生のきっかけだった」。商品本部の島田奈奈ファストフーズ部長はそう説明する。

ファミチキにかぶりつく上田氏。伊藤忠で畜産畑を歩んだ「肉のプロ」ならではのこだわりがあった(記者撮影)

ファミチキの発売は、Lチキ誕生より3年早い2006年。当時の社長だった上田準二氏(現在は相談役)の肝いりで商品開発が進んだ。上田氏が伊藤忠商事で畜産畑を歩んできたこともあり、「何度も作り直しを指示された」と島田部長は振り返る。

現在、ファミチキは1店舗で1日平均40個(全種類のファミチキの合計)を売り上げる超人気商品となった。価格は税込み180円と、Lチキよりも30円高い。

酉年のチキン戦争は熱い

こだわりは半端ではない。島田部長は「一定の管理された温度で、一貫生産をしている点がポイント」と主張する。ファミチキはタイで製造されているが、製造を担うメーカーは鶏肉の加工を行うだけではない。卵をふ化させ、鶏を育てたうえで加工するという一貫した体制を構築している。

驚くべきは加工スピード。早ければ、生きていた鶏が2時間でファミチキに仕上がるという。「近くの養鶏場で育て、すぐに加工する。鶏にストレスを感じさせず素早く商品にすることで、味を落とさないようにしている」(島田部長)。こうした努力がファミチキの味を支えているのだ。

ローソンのLチキと、ファミマのファミチキ。今後はどんな商品が出てくるのか。Lチキを担当する橋本氏は「現在は2種類の味だが、ほかの味の商品も検討中」と話す。ファミチキ担当の島田部長は「健康志向の新商品を作りたい。より大きなサイズの商品も検討したい」と語る。

今年は「酉年」。年初にローソンが「でか焼鳥」と発売すると、6月にはファミマが「炭火焼きとり」を投入し、焼き鳥でも激しいバトルが勃発している。セブン‐イレブンも主力の「揚げ鶏」をはじめ、骨なしチキンのラインナップを拡充している。コンビニ大手3社による「チキンレース」は一層過熱していきそうだ。

又吉 龍吾 東洋経済 記者

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またよし りゅうご / Ryugo Matayoshi

2011年4月に東洋経済新報社入社。これまで小売り(主にコンビニ)、外食、自動車などの業界を担当。現在は統括編集部で企業記事の編集に従事する傍ら、外食業界(主に回転ずし)を担当。趣味はスポーツ観戦(野球、プロレス、ボートレース)と将棋。

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