「石つぶて」で名も無き人に光をあてたかった 外務省の腐敗に斬り込んだ清武英利氏が語る
もともとは根っからの社会部記者だった
――なぜ、今回の『石つぶて』では、警視庁捜査二課が物語の舞台だったのですか。
もともと私は読売新聞で社会部の記者をしており、その延長で球団経営にも担ぎ出されたわけですが、根っからの社会部記者です。ちょうどバブルの時代、警視庁や国税庁を担当し、証券不祥事や金融機関破綻など経済的な事件も多かった。
今はノンフィクションを書く職業に就いていますが、ほかの人がやっていないことをやるのに書く意義を感じています。それも無名でも、清廉で激しく生きた人を書いて、たとえ(本が)売れなくても人々を残したい。大組織の中で自分を貫く人間の矜持を描きたかった。たとえば破綻した山一證券の場合、賢い人は早めにほかの会社へ行って再スタートを切ったわけですが、最後まで踏みとどまって破綻原因を追求したり、清算活動に従事したりした人もいました。難しい生き方です。
石つぶてとは、石ころのこと。警視庁の捜査二課を担当した中で、この人は自分を持っている、という警察官がやっぱりいた。上司から言われたことをうのみにせず、信念に従って仕事する、そういう人たちを(書き)残したいと思ったのです。
――何か具体的なきっかけはあったのですか。
そんな気持ちがあったところに、2014年、警視庁捜査二課の汚職摘発がゼロになってしまった。以前からどんどん減っていることはわかっていましたが。改めて「なぜか」と考えた、ゼロになるなんて。この世の中、きれいになったとはたぶん誰も思っていませんよ(苦笑)。
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