「石つぶて」で名も無き人に光をあてたかった 外務省の腐敗に斬り込んだ清武英利氏が語る

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読売新聞を経て現在はノンフィクション作家の清武氏。今回は外務省の機密費疑惑を現場の第一線の刑事たちが追うストーリーだ(撮影:山内信也)
清武英利氏と言えば、読売巨人軍の球団代表兼GM・編成本部長・オーナー代行として、あの渡邉恒雄氏に非を唱え、その後解任された、”清武の乱”が記憶に新しい。だがその後は、『しんがり 山一證券  最後の12人』(講談社+α文庫)で講談社ノンフィクション賞を受賞したのをはじめ、ノンフィクション作家としての活動で知られる。今回上梓された『石つぶて 警視庁二課刑事の残したもの』(講談社)では、外務省と官邸のタブーだった機密費問題を追いかける様に焦点をあてた。

もともとは根っからの社会部記者だった

――なぜ、今回の『石つぶて』では、警視庁捜査二課が物語の舞台だったのですか。

もともと私は読売新聞で社会部の記者をしており、その延長で球団経営にも担ぎ出されたわけですが、根っからの社会部記者です。ちょうどバブルの時代、警視庁や国税庁を担当し、証券不祥事や金融機関破綻など経済的な事件も多かった。

今はノンフィクションを書く職業に就いていますが、ほかの人がやっていないことをやるのに書く意義を感じています。それも無名でも、清廉で激しく生きた人を書いて、たとえ(本が)売れなくても人々を残したい。大組織の中で自分を貫く人間の矜持を描きたかった。たとえば破綻した山一證券の場合、賢い人は早めにほかの会社へ行って再スタートを切ったわけですが、最後まで踏みとどまって破綻原因を追求したり、清算活動に従事したりした人もいました。難しい生き方です。

石つぶてとは、石ころのこと。警視庁の捜査二課を担当した中で、この人は自分を持っている、という警察官がやっぱりいた。上司から言われたことをうのみにせず、信念に従って仕事する、そういう人たちを(書き)残したいと思ったのです。

――何か具体的なきっかけはあったのですか。

そんな気持ちがあったところに、2014年、警視庁捜査二課の汚職摘発がゼロになってしまった。以前からどんどん減っていることはわかっていましたが。改めて「なぜか」と考えた、ゼロになるなんて。この世の中、きれいになったとはたぶん誰も思っていませんよ(苦笑)。

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