女よりアニメを選んだ男が46歳で迎えた転機 キャラとの恋愛で満足も、子どもは欲しい…

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「恋愛したいと思わなかったの?」
 「したいとは思いましたけど、その頃の僕は、恋愛に関して自己完結ができていたんですよ」

泰典のいう自己完結とは、どういうことなのだろうか。

「精神的にはアニメに出てくる子と恋愛できたし、体は風俗には行けばそこで満足できた。あ、風俗には今でも時々行ってますけどね」

と、ひょうひょうと話す。生身の女性を愛し、愛したからその先に肉体が欲しくなるのではなく、精神的恋愛と肉体の欲望をバラバラに満たし、そこで恋愛を完結させる。そこが“恋愛がこじれてしまった”原因だと本人は分析する。

母の病気で「アニメ漬け」の人生が一変

これまでを振り返ると、アニメやゲームにハマっていた人生が一変したのは30歳の時だったという。大学を卒業し一般企業に就職をしたのだが、母が病気で倒れたため、実家に戻って家業を継ぐことになった。

「もともと家業を継ぐ気ではいたんです。ウチは、7、8人のパートさんを雇う結構な敷地面積のある農園なんで。ただ僕が大学を卒業する時には親父もお袋もまだ現役だったし、社会勉強のために一度は就職をしたほうがいいかなと思ったんですよ」

ただ、行きたい会社に就職できたわけではなかった。泰典が大学を卒業する時は就職氷河期であり、志望したところは軒並み不採用。やりたい仕事に就いたわけではない。母親が倒れ父親から、「会社を辞めて、家業を手伝ってくれ」と言われた時に、勤めている会社を辞めることに未練はなかったという。

こうして都内から地元に戻ったのだが、田舎で農業を始めてみると生活がいっぺんした。隣近所とつきあったり、組合の会合に出たりと、よくも悪くも人間関係が濃くなった。

「祭りや組合の会合の後は、必ず酒盛りになる。もともと田舎育ちだし、酒を飲むのは好きなので、それが決して嫌ではなかったんですけど」

泰典の人なつっこさは、この環境から作られたのかもしれない。

「ただひとつ、どうしても馴染めなかったのが、そうした飲み会の後、2次会は男だけでキャバクラとか、お姉ちゃんのいる店に行くことでした。隣についてくれたお姉ちゃんと、みんなデレデレしながら楽しそうに話している。何を話しているかというと、パチンコやギャンブルの話。あと、“こういう土だと野菜や果物がよく育つ”みたいな培養土の話。そんなこと聞いても面白いわけがないのに、女の子たちはみんなキャッキャしながら話を合わせている。“商売だからニコニコしているんだろうな”と思うと、“よくやるなぁ〜”と、僕は逆にシラケていました」

一般的に男性は、キャバ嬢の胸の谷間や短いスカートからのぞく太ももを見て、雄の本能を発揮させる。ニコニコと話を聞いてくれる女性に、心をつかまれる。しかし泰典は、商売上手な女、そこにデレデレする男を引いた目で観察してシラケている。それは、心と体を乖離させた、泰典が言うところの“自己完結の恋愛”を長い間、してきたからなのだろうか。

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