パリバショック10年、世界の債務は史上最高 シドニーのホームレスにみる金融危機の影

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2008年9月15日、リーマンブラザーズが破綻し、株価の暴落が世界を駆け巡った。悪夢は甦るのか(撮影:風間仁一郎)

来るべき損失に耐えられるのか

デフォルト率上昇は、企業の新陳代謝を促すものであり、恐らく避けられないだろう。問題は、これが大きな危機に発展するかどうかである。

金融危機後、先進国の銀行の不良債権引当金の比率は大幅に減少した。米銀の引当金は貸出総額に対して1.3%と、サブプライム問題の時期の半分以下になっている。邦銀の引当率も一貫して低下を続けており、総貸出に対する引当率は0.4%程度と、2000年代初頭の5分の1程度となっている。

好景気に支えられた現在の企業の財務力をみれば、それも不自然ではない。しかし、実績中心の今の計算方法だと、業績が順調な時には引当金が薄くなりがちで、リスクへの備えが後手に回りがちだ。急速に景気が悪化したり、不動産価格が暴落した場合には、銀行に巨額の損失が発生しかねない。

しかも、世界の債務総額が膨張しているということは、毎年借り換えを迎える債務も増加していることを意味する。これに伴い、企業や国がデフォルトを起こした場合、その規模も巨大になりうる。銀行の資本は厚くなっているとはいえ、規制で求められる最低資本比率も引き上げられてしまっているため、意外と余裕はない。巨額の損失が出れば、貸し渋りと非難されようと、リスク回避に走らざるを得ない。

まだ金融危機は杞憂に過ぎないかもしれない。しかし、一部の資金の流れは、経済実態から乖離し始めており、バブルである可能性が高い。そろそろ警戒感度を上げておいた方がいいかもしれない。

大槻 奈那 ピクテ・ジャパン シニア・フェロー、名古屋商科大学大学院 教授

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おおつき・なな / Nana Otsuki

東京大学文学部卒業。邦銀勤務の後、ロンドン・ビジネス・スクールにて経営学修士(MBA)を取得。格付け会社スタンダード&プアーズ、UBS証券、メリルリンチ日本証券にてアナリスト業務に従事。2016年1月よりマネックス証券 執行役員。2022年9月より現職。名古屋商科大学大学院教授、二松学舎大学客員教授を兼務。共著で、『S&P 日本の金融業界』シリーズ(東洋経済新報社)、『リテール金融のイノベーション』(金融財政事情研究会)、『本当にわかる債券と金利』(日本実業出版社)など。ロンドン証券取引所 アドバイザリーグループ・メンバー。政府委員を歴任。

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