「韓国女子ゴルフ」が世界で圧倒的に強いワケ

日本の女子選手とはいったい何が違うのか

日本ツアーで活躍し、今は韓国選手キム・ハヌルのマネジメントをしているキム・エースク氏が昨年、日本ゴルフジャーナリスト協会のタウンミーティングで韓国選手の強さについて語る機会があった。

キム氏は韓国選手だけでなく、日本人選手のマネジメントもしているので、その違いを明確に理解している。その中でキム氏が最初に言ったことは、朴セリの影響の大きさだ。「1998年に全米女子オープンで朴セリが優勝した。その時期、韓国経済は厳しい状況でIMF(国際通貨基金)から介入を受けていて、米国に勝ったことが韓国国民に勇気を与えた」のだという。

「それを見て朴セリに憧れた『朴セリキッズ』世代である、申ジエ、イ・ボンミなどが今の韓国を強くしている。さらに2009年に申ジエが米国LPGAで賞金女王になり、それを見ていた子供たちが活躍し始めている」(キム氏)。つまり、世界No.1になった選手が出たことが、大きな飛躍のきっかけになったということだ。

韓国選手の強烈な「世界ナンバーワン」志向

さらに、キム氏は韓国の国民性についても触れた。「国を背負って戦うことはおカネ以上に名誉なことだと誇りを持っている。そして、競争社会で1番になる志向が強く、特に世界で1番になることを目指している」。

比べてみると、日本の場合、何が何でも1番になるという志向が薄いように感じる。運動会などでも順位の優劣よりも「みんな頑張っている」ことでよしとしがちな風潮の影響があるのかもしれない。

キム氏は韓国の国民性として、もう一つ、「人々の生き方の中心に、まず何よりも先に家族がある」ことをあげている。キム氏は韓国選手が強いベースには「韓国選手は死ぬほど練習する」ことがあると言う。筆者も実際に見ているが、確かに日本のツアー会場で、最後まで練習場にいたり、あるいは暗くなるまでパッティンググリーンで練習しているのは韓国選手である。なぜ、そこまで練習するかといえば、先ほどの1位志向の強さと、この家族への愛があるからだと、キム氏は言うのだ。

つまり、韓国選手とその家族の場合、選手である子供が練習しているときは、その家族も同伴して練習場で同じ時間を過ごし、親は子供のトレーニングのためにすべてをささげる。たとえば、子供が米国の環境で練習したほうがよいと考えた場合、父親が韓国の会社で出世していてかなり高いポジションにいたとしても、それを簡単に捨てて、仕事は選ばずなんでも引き受けて、子供のために米国へ移住する。日本ではなかなか考えられないことである。

また、プロを目指すようなゴルファーでも、日本の場合はジュニアの頃から親が教えることが多いが、韓国では専門のコーチに任せるのが一般的だ。

韓国人選手の親は、おカネがあれば米国やオーストラリアに子供を留学させる。そこまでおカネがなくて、ゴルフ留学は無理だという場合も、少なくともコーチの費用は工面する。

韓国ではゴルフエリートを養成するために、学校も積極的に協力していることが多い。ゴルフ部の生徒は、ゴルフのために授業に出る時間が少なくなるが、ゴルフで優秀な成績を取ることは、学校の名誉にもなるので特待生として優遇する。

こうした環境の中、家族の期待を背負って子供たちは、それこそ、死ぬほど練習し、ゴルフに集中するのである。もちろんエリートを志向するすべてのジュニア選手が成功するわけではないのだが、トップクラスの活躍を見せる韓国選手が多くなるのは必然だ。

今シーズンいっぱいでの引退を表明した宮里藍は最後の全米女子オープンを41位タイで終了した。先述したように彼女の夢は全米女子オープンで優勝することであったが、届かなかった。後に続く日本人の若手が韓国選手の強さの秘密を学んで、彼女の夢を引き継ぎ、実現させることを願わずにはいられない。

(文中一部敬称略)

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