自撮りアプリ「BeautyPlus」の知られざる実態 日本でも話題の自撮りアプリは中国発だった

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そして通された会議室に現れたのが、「MEITU」の文字がプリントされた黒いTシャツ姿の男性。現在36歳の彼の名は呉欣鴻(ウ・シンホン)。Meituの最高経営責任者(CEO)だ。

CEOを務める呉氏は36歳(記者撮影)

笑みを絶やさず柔和な口調が印象的な呉CEO。だが、これまで手がけてきたビジネスは決して順風満帆とは言えない。

高校時代からドメインへの投資などを行っていた呉CEOは高校卒業後、厦門近隣にある泉州でネットサービス会社を起業した。だが、軌道に乗せることができずに数年で倒産。その後、出会い系サイトも立ち上げたが、これも失敗に終わった。

そんな時に手を差し伸べたのが、Meituのもう1人の創業者で、エンジェル(創業支援)投資家の蔡文勝(ツァイ・ウェンシャン)氏だった。

呉CEOは蔡氏の会社にプロジェクトマネージャーとして、「火星文転換器」(フォーシンウェンジュアンファンチー)と呼ばれるソフトウェアを開発した。これは日本で言うところのギャル文字のようなもので、入力した言葉を、違う文字や数字、記号に変換するソフトだ。暗号っぽい見た目がおもしろいと、多くの若い女性の心をつかんだ。

モデルからの一言がきっかけ

Meituは自然に美しく加工できる自撮りアプリを開発した(記者撮影)

この成功体験を基に、若い女性をターゲットに開発したのが美図秀秀だった。きれいに加工できる機能に目をつけたのは、呉氏が趣味とするカメラが関係している。

「ある時、女性モデルの写真を撮っていたら、もっと写りをよくしてほしいと言われた。僕は自分ではフォトショップ(画像編集ソフト)を使いこなせない。それならば女性が自分で簡単に画像を加工できるアプリを開発しようと思った」(呉CEO)。

美図秀秀は女性の心をとらえ瞬く間にヒット。同様に、きれいに自撮りができることに重点を置いたスマートフォン端末の開発・販売に着手。また2014年には撮影した動画をきれいに加工できる「美拍」(メイパイ)などのアプリソフトを開発し、いずれも人気を博している。

スマホ販売や新アプリ開発でMeituの売上高は急拡大している。2016年は15.7億元(日本円で約259億円)と、会社のホームページで確認できる2013年から4年で18倍になった。

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