蓮舫氏・稲田氏「ダブル辞任」でも違いはある 自ら「ガラスの天井」に頭ぶつけた2人の今後

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蓮舫氏は、25日の「続投宣言」で明言した次期衆院選での東京の小選挙区からの鞍替え出馬についても、「考え直す」と事実上撤回した。自らの代表就任で「衆院と参院の壁を低くした」と自賛した蓮舫氏だが、もともと地元目黒の「東京5区」も含め、都内の小選挙区の党公認候補を押しのけての出馬が疑問視されていた。それもあって、「参院の蓮舫」に戻らざるをえなかったのが実情だろう。蓮舫氏は共産党との選挙協力についても「新執行部も引き継いでほしい」と路線の継承を求めたが、党内は「次期衆院選での民共共闘は永遠の野党への道」(保守派幹部)と冷ややかだ。

蓮舫氏の辞任表明を受けて新たな代表選びに向けて動き出した民進党だが、現時点で出馬に意欲を示しているのは1年前の代表選に出馬した前原誠司元外相(元民主党代表)と、実力者の枝野幸男元官房長官。両氏は崩壊した民主党政権の中核だっただけに「同じことの繰り返しで、国民の信頼は取り戻せない」(若手)と抜本的な世代交代を求める声も強い。だが、「結局は数の勝負で、党内各グループの合従連衡が進めば若手の出番はない」(民進党幹部)という実態は変わりそうもない。

しかも、1年前のように地方党員やサポーターも参加する代表選にする方針のため「準備や手続きを含め、夏いっぱいかかる」(民進党事務局)ことは確実で、執行部は28日、「9月上旬までに新代表と新執行部を決める」ことを確認した。

蓮舫氏は「新執行部が決まるまで100%以上の力で職務を遂行する」というが、「残務処理の執行部」(民進党幹部)では、第2次政権発足以来の最大のピンチを迎えている安倍1強政権に「一太刀浴びせる」ことは困難。野党がそろって要求している臨時国会も政府が9月中旬以降に先送りすることは確実で「蓮舫氏辞任は、結果的に窮地の安倍政権に塩を送った格好」(首相経験者)でもある。

かばい続けた安倍首相も更迭を余儀なくされた

この蓮舫氏辞任と連鎖する形で、稲田氏も28日午前、首相に辞表を提出し受理された。防衛相は改造まで岸田文雄外相が兼務する。自衛隊南スーダンPKO部隊の「日報隠蔽」問題だけでなく、都議選での「憲法違反発言」など1年足らずの防衛相在任中、失点を重ね続けても稲田氏を擁護し続けた安倍首相――。だが、さすがに「堪忍袋の緒が切れて」(側近)、改造人事直前に"更迭"せざるを得なかったのが実態だろう。

当初、首相は8月3日の内閣改造で稲田氏を交代させるという「逃げ切り」を考えていたとされる。しかし、「日報電子データ」が陸上自衛隊で見つかったことへの省全体の対応を解明するため稲田氏自身が指示した「特別防衛監察」でも、稲田氏と陸上自衛隊幹部の見解が対立した。陸自が出所とみられる「情報漏洩」も相次ぎ、稲田氏が防衛省を統率できない姿を国民の前に露呈したことで、首相も決断を余儀なくされた。辞表を受理した首相は記者団に「任命責任はすべて私にある」と厳しい表情で語った。

次ページ報道は「稲田辞任」が「蓮舫辞任」を圧倒
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