蓮舫氏・稲田氏「ダブル辞任」でも違いはある 自ら「ガラスの天井」に頭ぶつけた2人の今後

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稲田氏は首相の「秘蔵っ子」とされ、「首相が要職に就け続けたことで『首相候補への階段』を速足で上ってきた」(自民幹部)ことは事実。それだけに今回の更迭は「泣いて馬謖(ばしょく)を切った」(同)というよりも、「これ以上かばったら、首相の任命責任が倍加する」(長老)との危機感から「首相が自ら引導を渡した」のが実情だろう。

こうしたドタバタ劇の中、27日夜から28日午後にかけてのメデイアの報道ぶりは「稲田辞任」が「蓮舫辞任」を圧倒した。大手紙の28日朝刊の一面トップも「稲田辞任」で「蓮舫辞任」は2番手だった。どちらも、自らがトップに立つ組織を「統率できなかった」ことが理由だが、当面の国政への影響の大きさの「差」が報道にも反映した格好だ。

「加計問題疑惑」など安倍政権の政治姿勢をテーマとした25日の参院予算委閉会中審査では蓮舫氏が稲田氏を「防衛省をしっかり統率できていない」と舌鋒鋭く追及したばかり。その蓮舫氏が27日の辞任会見で「統率力が不足していた」と反省したあたりは「"ブーメラン民進党"を地で行く」(自民幹部)ことにもなった。「首相に対峙する党代表と、内閣の一閣僚という立場の差も無視したメディアの対応」(民進党幹部)は、存在意義まで問われる民進党の党勢衰退を浮き彫りにしている。

絶望的な稲田氏、展望を描ける蓮舫氏

49歳の蓮舫氏と58歳の稲田氏。男性政治家に伍して毅然として振る舞う"男前"の蓮舫氏と、タカ派的言動とは裏腹の「頼りなげな風情で男心をくすぐる」(自民幹部)稲田氏ではキャラクターの違いが際立つ。ただ、「政財界の長老的男性に巧妙に取り入る"爺殺し"」(自民長老)という評価では共通する。

これまでは両氏は、将来の首相候補として名前が挙がる「女性政治家の星」とみられてきた。今回の辞任劇でそろって「ゼロから出直し」を迫られることになるが、どちらも再起への道筋が見えない点も同じだ。

ただ、稲田氏は「もともと首相に気に入られて取り立てられただけ。政治家としての見識のなさを露呈しての辞任で、再起は絶望的」(自民幹部)との厳しい見方が支配的だが、「もう一度、自分に何が足りないかを考え抜く」という蓮舫氏のほうはまだ将来への展望は残る。民進党の「政権交代の受け皿になれる強い党」への再生が絶望視される中、「来るべき政界再編の渦を、政治家としていかに泳ぎ切るか」(民進党長老)が蓮舫氏の当面の課題となりそうだ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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