「同期の友情」に縛られる若手社員たちの憂鬱 仲良し集団は意外に長くは続かない?

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自私自身にも入社当時、数百人の同期がいましたし、同じ職場に数名がまとまって配属されました。でも、正直言うと、「同期だからわかり合える」と思ったことはほとんどありません。でも、逆に「同期と同じレベルにいても仕方ない」とまで突き放して見ているわけでもなかった。同期も、先輩たちと同じ仕事仲間と見ていて、あまり特別な存在だと意識してこなかったように思います。

同じ役割を一緒に任されるのは楽しいと思えなかった

同期同士で競わされたり、同じ役割を一緒に任されたりするのは、新人だからかな、という風に思いつつ、あまり楽しいと思えませんでした。むしろ、早く「新人」「同期」「〇年入社」と括られないようになりたいと思っていました。たくさんの同期の中には、意識する人や尊敬する人も確実にいたのですが、それは同期だからではなくて、「その人だから」意識していた、というのがその理由でした。

それは、年次を重ねてからもあまり変わらず、「あの部署に同期がいるから聞いてみるよ」とか「同期のよしみで情報を教えてよ」といった会話をした記憶はほとんどないですね。仕事上での関係でいけば、やはりその仕事や情報に精通している人との関係を大事にしてきたと思います。それがいいかどうかは、よくわからないけれど、「そのせいで苦労した」と思ったことはありません。つまり、あっという間に、「同期」は「同僚」になる、ということ。仕事での関係を大切にさえすれば、つるまなくてもきっと良い関係を保つことができるはずです。

「友人・仲間としての同期」としての関係は、経験から言うと、入社して10年、20年経つと、違った形で新たに築くことができると断言できます。40歳くらいになると、おっくうだった同窓会に「参加してみようかな」と思うのと同じです。「昔話ばかり」「自慢話ばかり」というのではなくて、同じ季節を走ってきた、ひとりの仕事人同士、尊重し合えたり改めて刺激を受けたり、仕事以外の場で会いたくなったり、お互いを個人として認め合える日がやってくることもあるのです。

私の父なんて、サラリーマンを引退してから10年以上経ったおじいちゃんだけれど、現役時代よりずっと旧同期で飲みに行っているようです。仕事仲間も引退して、気の置けない友人という関係が新たに生まれたのでしょうね。だから、今のあなたが、「居心地が悪い」「人間関係で悩みそう」なんて幼いことを心配しないで大丈夫! あなたが行動を共にしない、というだけで、関係が悪化するとしたら、遅かれ早かれそうなる運命です。

万が一、それがもとで意地悪されたりするならば、そうした人が評判を下げるだけで、あなたが悪者にされることなんてありません。そんなことに労力を割くよりは、お互いに目の前の仕事に懸命に取り組み、それぞれに成長することを志向すべきです。そのプロセスこそが、ずっと先の豊かな人間関係の源になるはずですから。

あなたがまず、その「居心地の良い」「窮屈なくらい一緒につるむ」同期集団から抜け出してごらんなさい。抜け出す、と言ったって、同期とはごくごく普通に接しつつ、先輩や職場の違う同僚とも理解し合おうとする姿勢を示すだけのこと。そうすれば、自然とその6人のスタート集団はばらけてくるでしょう。そして、それぞれが自分のペースで走っていくようになるのです。

社会人になって数カ月、また次の一歩を踏み出すことになりますね。ほんのちょっと勇気を出してみて! そんなあなたを心から応援したい、と私は思います。

堂薗 稚子 ACT3代表取締役

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どうぞの わかこ / Wakako Dozono

1969年生まれ。1992年上智大学文学部卒業後、リクルート入社。営業として多くの企業を担当し、数々の営業表彰を受ける。管理職として、多様な雇用形態の組織の立ち上げやマネジメント、『リクルートブック』『就職ジャーナル』副編集長などを経験。2004年第1子出産。2007年当時組織で最年少、女性唯一のカンパニーオフィサーに任用され、事業責任者、「リクナビ派遣」編集長を務める。2010年に第2子出産後はダイバーシティ推進マネジャーとして、社内外女性のメンターを務めつつ、ワーキングマザーで構成された営業組織の立ち上げ、マネジメントを担当し、彼女たちの活躍を現場で強く推進した。経営とともに真の女性活躍を推進したいという思いを強くし、2013年退職。株式会社ACT3設立、代表取締役。女性活躍をテーマに、講演や執筆、企業向けにコンサルティングなどを行っている。2013年2月、リクルート在籍時に東洋経済オンライン「ワーキングマザーサバイバル」連載に登場。FBのいいね!数が6000を超えるなど、話題となった。

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