「ジャンボ機」が生産終了に追い込まれたワケ

旅客型ジャンボは間もなく生産終了へ

これまで述べたとおり、747の旅客型は大韓航空向けの機体をもって生産が終了する運びだ。ただ、貨物型は米国の大手宅配会社UPSから747-8を14機受注しているため、生産そのものは続行される。

ジャンボを最初に飛ばしたのは今はなきパンナム。1970年にロンドン―NY間に就航した(1974年、ケネディ空港で撮影/Wikimedia Commons)

これまでの実績から見て、2カ月に1機のペースで納入が進められる見通しなので、完納までは2年程度かかるとみられている。これに加え、老朽化が指摘されている米大統領専用機「エアフォースワン」の更新に当たり、747-8をベースにした機体2機を使う計画がある。しかし、ドナルド・トランプ大統領がコストの圧縮を求めているほか、「実際の運用開始は2024年度以降」とされており、プランどおりに更新が実施されるかどうかはっきりしない。

燃費が悪くて、しかも着陸料が高いとあっては、新たに747を購入しようというインセンティブが生まれるはずもない。世界中にはまだ500機あまりの747が飛び交っているが、退役後に中古機の引き合いが来るのは絶望的のようだ。貨物機への転用の形で飛び続けられることもまれで、「部品取り用に残される以外は、どこかの砂漠に廃棄される運命」(前述のアナリスト氏)だという。747より定員数が多いA380も昨年の新規受注は1機もなく、「一度はあの2階建て機に乗ってみたい」と考える航空ファンや海外旅行予備軍の期待をよそに、ビジネス的には先細りという厳しい状況にある。

747に乗れる機会はあるのか

「ジャンボ機」は、一昔前に飛行機を利用していた人々にとっては「飽きるほど乗った機体」ではないだろうか。国際線だけでなく、国内線の幹線ルートは747が大半を占めていたからだ。

逆に、過去10年ほど海外旅行から遠ざかっていた人の目には、各航空会社が機体のダウンサイジング(縮小化)を進めていることから「最近の飛行機はずいぶんと小さくなった」と映るかもしれない。日本の航空会社はこれまでに747の旅客型をすべて退役させており、現在はわずかに貨物型が残っているにすぎない。

かつて成田空港では、夕方になると米系航空会社の747が多数駐機している光景が見られたが、これらの機体を飛ばしていたデルタ航空やユナイテッド航空は、今年中に747旅客型全機の退役を決めている。日本に引き続き定期便として乗り入れているのは、現ダイヤではルフトハンザ航空をはじめ、タイ国際航空、チャイナエアラインなど少数派となってしまった。

LCC(格安航空)が普及した昨今、「大きな飛行機」で運航を行って来たフルサービスキャリア(FSC)は、コストダウンを図りながらサービスの差別化を進めるといった厳しい課題を押し付けられている。

747旅客型の生産が終わらんとする一方で、ボーイング社は今年、同社のベストセラー機737の改良型「737MAX」の納入を開始した。単通路機ながら米国―欧州間を無着陸で飛べるのが特徴で、今秋には複数のLCCが米東海岸と英国を結ぶ路線に参入する。従来、LCCのビジネスモデルでは「長距離路線の運航は厳しい」とされ、幾多のLCCが大陸間路線に挑んだものの、撤退もしくは会社そのものの倒産に追い込まれて来た。しかし、技術の進歩により低コストで長距離を飛べる機体の出現で、これまでと違った需要が生まれ、LCCが長距離線の新たな担い手になるのかもしれない。

「大きな飛行機・747」の誕生で、航空旅行がより身近なものになった1970年代。今度は、「遠くに飛べる小さな飛行機」の普及で、航空旅行は新たな局面を迎えようとしている。

ライフの人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • 新型コロナ、長期戦の混沌
  • 新競馬好きエコノミストの市場深読み劇場
  • ドラの視点
  • 精神医療を問う
トレンドライブラリーAD
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
三菱重工と日立 「統合」破談から<br>10年 製造立国の岐路

10年前に統合構想が破談になった三菱重工業と日立製作所。その後両社は対照的な道を歩み、2009年に伯仲していた時価総額は今や日立が大きく上回っています。本特集では明暗が分かれた三菱重工と日立を主軸に、製造立国・日本の生きる道を探りました。

東洋経済education×ICT