テレビの映画再放送にイラッとする人の目線 「またジブリ?」他局のドラマ潰しに終始

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また、各局が映画事業に力を入れていることも、再放送の多さに関係しています。2016年は邦画の興行収入が過去最高の1486億円を記録しましたが、民放テレビ局は『踊る大捜査線 THE MOVIE2』(フジテレビ)が興行収入173億円の大ヒットとなった2003年あたりから積極的に映画製作するようになりました。もはやテレビ局は、テレビ番組の製作だけでなく、映画製作会社ともいえるのです。

今年も日本テレビが『THE LAST COP/ラストコップ』『メアリと魔法の花』、フジテレビが『昼顔』『帝一の國』、TBSが『忍びの国』『チア☆ダン』、テレビ朝日が『TAP-THE LAST SHOW―』などを公開。公開時期に合わせて、似たテイストの映画や、主演俳優が同じ映画を再放送するなどのPRをしました。

さらに各局は、『名探偵コナン』『ワンピース』『ドラえもん』『相棒 劇場版』『クレヨンしんちゃん』『アンパンマン』などの人気シリーズの映画も製作。こちらも新作の公開に合わせて、旧作を再放送しているのです。

テレビ局自身が製作したものであれば、当然ながら再放送のコストは安くなりますし、そのうえ、新作映画のPRになるのですから一石二鳥。多額のコストをかけて2時間のドラマやバラエティ番組を作るよりも、再放送の映画を選ぶ機会が増えているのも無理はないのです。

新作映画がテレビ放送されない理由

しかし、テレビ局が製作する映画が多い割に、あまりテレビ放送されないのはなぜでしょうか?

その理由は、やはり「視聴率が取れない」から。「興行収入が振るわなかったものを放送しても見てもらえないし、新作は録画される可能性も高いから、視聴率を取りやすい人気シリーズを再放送したほうがいい」という思惑があるのです。

また、テレビ局以外が製作した映画は放映権という費用面の問題があり、「コストに見合うコンテンツでなければ放送されない」のも寂しいところ。かつて邦画・洋画を問わずヒット映画は必ずテレビ放送されていましたが、近年はそうでもないのです。

その結果、「各局が提携する動画配信サービスか、CSチャンネルなどの有料コンテンツでなければ見られない」という新作映画が続出。「新作映画を無料の地上波で見たい」という視聴者にとって悲しい状況は、残念ながらしばらく続くでしょう。

各局がこのまま映画再放送のような消極的な姿勢を続けていたら、テレビが「ときどき録画番組を見るだけ」「ネットコンテンツやDVDを楽しむだけ」のスクリーンとなりかねません。“日本のナショナル映画”ともいえるジブリ映画の再放送に関しては賛否両論がありそうですが、今後もテレビ局が映画を収入の柱とするのなら、新作を放送するなどのポジティブなスタンスが欠かせないでしょう。

木村 隆志 コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者

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きむら たかし / Takashi Kimura

テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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