不二越会長、「富山人はいらない」発言の真意 ロボット技術者の確保するために東京へ軸足
そうした中で、不二越の課題となっているのが、ロボット技術に長け、海外でも通用する人材の確保だ。そこで、不二越は採用強化の一環として、「本社・本店を東京に移す」決断を行った。
これまで、不二越は登記上の本店を富山県に置き、本社を富山と東京に置く2本社体制を敷いていた。これをまず、今年の8月に本社を東京に1本化。2018年2月にも開催する定時株主総会の定款変更を経て、本店を富山から東京へと移すことになる。
これまで経営陣も東京と富山を往復する生活を続けてきたが、東京に腰を据える。ロボット開発部門や企画関連部署は東京本社に移すという。
採用についても、「グローバルな展開や今後の経済・産業構造の変化に対応するため、人材の多様化が不可欠」(会社側)という認識で、東京や東京近郊にある大学や研究所とネットワークを構築し、優秀なロボット人材の確保を目指すという。
本社を東京に移すのは、「富山の一企業ではない」ということを社内外にアピールする狙いもある。現在、従業員の78%が富山県出身者、さらには過去5年間の新卒採用者のうち、富山県出身者が58%を占めているが、その状況を変え、富山以外からも多くの人材を集めていきたいという思いもある。
「ロボットを核にしたグローバル企業を目指すために、国内外で優秀で多様な人材を確保していく。そのために人材が集まる東京に拠点を移す。従業員に対して、世界に打って出るという意識改革を進めていかなければならない」(不二越の薄田賢二社長)。
生産拠点としては残るが・・・
とはいっても、不二越のこの方針に対して、富山の人々の胸中は複雑だろう。
「最近の学生は、地元で就職したいという意識が強くなっている」(文化放送キャリアパートナーズ就職情報研究所・平野恵子主任研究員)と言いう。富山県に本社を置く企業の中では、北陸電力や建材大手・三協立山に次ぐ売上高を誇る不二越は、地元に残りたい富山の学生にとって、理想の就職先のひとつに見えるはずだ。
しかし、会社が求める人材は、海外に出向いてどんどん活躍してくれる人材。同社の採用ホームページには、グローバルや海外という言葉が目立つ。
富山本社は「富山事業所」となるものの、重要な生産拠点・マザー工場として、これまでとおりの生産を続けていくというが、富山の関係者から見れば、「富山は本社ではない」ことに対する寂しさもあるだろう。
1928年に富山市に会社を設立して以降、ずっと富山経済と共に歩んできた。「不二越」は町名や鉄道の駅名にもなっており、心理的な喪失感もあるかもしれない。
「富山で生まれ、富山で育った会社である」と、不二越の地元への思いは強い。しかし海外展開を進め、今のほぼ倍となる売上高4000億円、従業員の所得倍増という成長戦略を実現させるためには、「富山の一企業」からの脱却は避けて通れない道なのかもしれない。
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