「稼げる子」に育てたいなら会計を学ばせよう おカネが動く意味をわかっておけば怖くない

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当たり前ではありますが、

支出より収入がつねに上回っている=黒字状態

であれば、マネープレッシャーとは無縁となります。「お金持ちになる」のではなく、「死ぬまで黒字でいる」という意識がまず大事です。子どもにも「黒字」意識をつける教育が大事。そのために会計の視点や知識を子どもに授けるのが、望ましいのです。

実際にはどうしたらいいでしょうか。損益計算書(PL)、貸借対照表(BS)、キャッシュフロー計算書という「財務3表」の読み方を教えたらいいでしょうか。それとも一緒に複式簿記の勉強をしたらいいでしょうか。

私は、普段の会話の中で事象を数字でとらえることから始めてみるといい、と考えています。

たとえば、「新幹線が将来的に時速400キロメートルの運転を目指す」というニュースを耳にしたら、一緒に「なぜか」を考えてみるといいでしょう。

「同じ車両で2往復するほうが多くの乗客が運べるから売り上げが増えるし、コストはあまり変わらないからだね」

「じゃあ、運転士はこれまでの倍の運転をすることになるけど、給料も倍増するの?」

「1日に働く時間が同じだと思うから、給料はそのままかもね」

「時速400キロメートルなんて怖いから危険手当も欲しいよ」

「すぐ着いちゃうから車内販売はなくなるね」

「弁当屋さんは打撃かもしれない」

など、さまざまな方向に思考を広げていくことで、確実に子どもの視点が変わってきます。

教育費を会計と親の愛で読み解く

たとえば大学の学費について、日本では親が出すのが当たり前のような風潮がありますが、会計の視点で考えてみましょう。

おカネが動けば、その背後には必ず理由があります。会計ではこれを仕訳で表現します。親が子どもの学費を支払えば、それは、

(1)子どもに対しての貸し付けであるか
(2)貸し付けた返済を免除する贈与であるか

上記のどちらかです。

『年収1000万円「稼げる子」の育て方』(文響社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

子どもから見れば、(1)は借り入れ、(2)は受贈です。

子どもに学費を出すのが親の当然の義務と考えたり、子どもが学費を出してもらうのを何とも思わなかったりするのが、当然とは言い切れません。甘えかもしれません。

実は私自身が会計を学び、子どもを持つまでこのことに気づきませんでした。親が子どもの学費を払うのは、子どもには稼ぐ力がないために代わりに支払っているにすぎません。つまり子どもに学費を貸し付けているわけです。とはいえ、そこには親の愛情が働きますから、貸付金の返済はあえて求めない。そのような視点で会計を学ぶことは大変意義深いのです。

林 總 公認会計士、明治大学特任教授

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はやし あつむ / Atsumu Hayashi

外資系会計事務所、監査法人を経て独立。『餃子屋と高級フレンチではどちらが儲かるか』(ダイヤモンド社)、『ドラッカーと会計の話をしよう』(中経出版)、『正しい家計管理』(WAVE出版)ほか著書多数。家計も会社経営も子どもの教育も目的は同じで、「お金」に振り回されるのではなく、「満足度の高い人生」を送るために使うべきだと説く。4人の息子の父親であり、会計のプロでもあることから、独自のアドバイスを展開している。

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