「稼げる子」に育てたいなら会計を学ばせよう おカネが動く意味をわかっておけば怖くない

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また利益額そのものを単純に比較しても、どちらが儲かっているかはちゃんと把握できません。それがROIを使えば、すぐにわかります。

キャデラック部門の利益が50億円、シボレー部門が60億円だったとします。対して投資金額はキャデラックが1000億円、シボレーが2000億円。ROIはそれぞれ下記のようになります。数字は実際のものではなく、あくまで仮定です。

キャデラック部門ROI:50億÷1000億×100=5%
シボレー部門ROI:60億÷2000億×100=3%

 

絶対的な利益の金額でシボレーのほうが大きくても、投資金額に対するリターンが大きいのはキャデラック部門ということになります。

会計の目をもたないと、生産台数や利益の絶対額にばかり目がいってしまい、的確な経営判断ができません。実際、会計の素養がなく利益を増やしたいあまり、無節操ともいえる莫大な投資を進めて資金繰りが行き詰まる例はゴマンとあります。スローンが就任する前のGMがそうでした。

スローンは会社全体を事業部に分けて、利益金額ではなく、投資に対する利益を求めました。これにより、GMの財務は強化され、しかも市場の異なる事業部が切磋琢磨(せっさたくま)してマーケティング力をつけた。会計の力により巨大企業を効率的に束ねることに成功しました。

会計を使った経営は1929年の大恐慌でも大いに役立ちました。アメリカの年間自動車販売台数が5分の1に激減するなか、GMの売り上げも190万台から53万台に落ちたのですが、本社が事業部の販売と財務の状況を把握していたため、素早い対応により危機を乗り切れました。

おカネは賢く使ってこそ成果が上がる

私たちはついつい多くおカネがあれば競争に勝てると思いがちですが、現実は違います。持っているおカネを賢く使ってこそ成果が上がるのです。

賢くおカネを使うためには、目標と行動計画、そして現状をおカネに置き換えることが大切です。これは企業や家計はもとより、一人ひとりが人生を生きるために幼い頃から身に付けておくに越したことはない常識ともいえます。

拙著『年収1000万円「稼げる子」の育て方』では、3つの幸福条件を定義しています。

① マネープレッシャーのない暮らしができる
② 好きな仕事ができる
③ 教養が身に付いている

会計の知識は、①の「マネープレッシャーのない暮らしができる」という条件に大きく関係してきます。いつも日々の支払いに追われ、おカネの不安を抱えて汲々(きゅうきゅう)としていることです。 おカネがないのは、本当につらいものです。私が中小企業のコンサルタントをしていた経験からいえば、経営が行き詰まっている会社は、例外なく社内の雰囲気が殺伐としていました。倒産の恐怖にかられ、心に余裕がないのだから、当然の成り行きといえます。

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