チャリティランナー・大島の"価値"を考える

「芸」をしない芸人に、高額ギャラでは感動できない

通算9回目となった昨年はポーランド・カトヴィツェで行われた。1km程度の周回コースを走るが、前回大会は史上最多となる34カ国から総勢248人が出走。優勝記録は男子が277.543kmで、女子が244.232kmだった。ちなみに24時間走の世界最高記録はイヤニス・クーロス選手の303.506km。東海道新幹線でいえば、「東京」を出発して「豊橋」(293.6km)を少し超える距離を走ってしまうから本当にすごい。

世界選手権に出場したランナーを取材したことがあるが、その“世界”は元箱根ランナーの著者でも想像を絶するものだった。給水や給食は走りながら行い、本気で記録を狙うランナーは基本眠らない。コース近くにトイレが設置されているが、わずかなタイムロスも嫌うランナーは走りながら済ませてしまう。

日本代表といっても巨額なおカネを負担してくれるスポンサーがいるわけではなく、必要経費の多くを自費で賄わなければいけない。日々のトレーニングを積み重ねて、レースでは己の夢のために、脚を前に出し続ける。どんなに頑張ったとしても、24時間テレビのように盛大な喝采が待っているわけではない。

もちろんギャラなんて存在しない。それでも人は走り続けるのだ。24時間テレビでも、タレントがこれぐらいのことをやってくれるなら、多くの感動を呼ぶことは間違いないだろう。こんなランナーたちを知っているせいか、24時間テレビのマラソン企画はバカらしく感じてしまう。

「芸」をしない芸人の”価値”とは

バラエティ番組などで観る大島は面白いと思うし、実際に何度も大笑いさせていただいた。しかし、走っている(歩いている)間は「芸」をしないはずだから、そこに芸人としての“価値”はあるのだろうか。

運動不足の女芸人にとって、真夏の東京を88kmも歩くのはきついことだろう。でも、それは誰もができないことではない。それどころか、常時、数名の伴走スタッフに誘導されて、エアコンの効いた休憩場所も確保されている。給水・給食はもちろん、昼寝とマッサージ付きのサポート態勢は完璧だ。公道を使っての“ひとりレース”には、「1秒でも速く」というランナーの本能ともいえる部分が完全に抜けている。

「サライ」が流れるエンディングの時間帯にフィニッシュできるように、緻密な計算を弾き出すスタッフの指示の下、大島は何も考えずに、言われるまま脚を前に出していく。

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