トヨタ「アクア」大ヒット車が密かに抱く憂鬱 6年目の一部改良モデル、「三代目」と名乗る

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一方、アクアはこれまで一度もフルモデルチェンジを行っていない。テレビコマーシャルには画面上に小さい文字で、2011年のデビュー、2014年のマイナーチェンジを経て、今回のマイナーチェンジモデルを「三代目」としている旨の注意書きが入っていた。

フルモデルチェンジできないジレンマを象徴している

厳密には「初代アクア」のままのモデルを、今回のマイナーチェンジで「三代目」と大きくアピールしているというわけだ。それはアクアがフルモデルチェンジをしたくても、なかなかできないというジレンマを象徴しているようにも見える。

アクアのこれまでの輝かしい販売実績から考えれば、次期型へ刷新すれば一定以上のヒットが見込めるモデルであることは疑いようがない。2代目アクアがいずれは登場するだろうと、自動車業界内でも考えられている。ただ、すでに6年目に入っているアクアがこのタイミングでマイナーチェンジをしたということは、直近、少なくともここ1年ぐらいの間に次期型へ切り替わる気配は薄い。次期型の確定的な情報もほとんど聞こえてこない。フルモデルチェンジにはまだ時間がかかりそうなのだ。

トヨタはいま新型車について、TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)という、新世代プラットフォームの採用を進めている。第1弾が現行の4代目プリウス。続いて昨年末に登場した新型SUV「C-HR」、今年7月に国内で発売した新型「カムリ」でも用いられた。

今後はトヨタ車全体でTNGAを展開していくことになるのだが、特にコンパクトモデルのモデル・チェンジ・スケジュールが、このTNGAの導入との兼ね合いでずれ込んでいるとの話もある。今年1月に実施されたトヨタのコンパクトカー「ヴィッツ」のマイナーチェンジもTNGAを採り入れた次期型がデビューするまでの「延命策」ともいわれている。アクアについても同じ構図が当てはまりそうだ。

それを反映してか、トヨタもアクアに従来のような大ヒットを見込んではいないようである。アクアの2016年(暦年)の販売台数は16万8208台。月平均で約1.4万台を販売したが、「3代目」と銘打っている最新アクアの販売目標は月間1万台と控えめだ。今年上半期(2017年1~6月)の月販平均とほぼ同水準。マイナーチェンジとはいえ、多少の刷新効果も見込まれる中で、やや弱気の目標にも見えてしまう。

ただ、かつて月販平均2万台以上を売った、アクアの絶対的な優位性も崩れている。今の最大のライバルは日産自動車「ノート」。2016年11月にマイナーチェンジを行い、同時に新開発のパワーユニット「e-POWER」 を導入した。

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