これから上昇するのはドルではなく金価格だ イエレンFRB議長の発言を真に受けるな

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しかし、これまで株価の下落を避ける政策を続けてきたイエレン議長が、退任が視野に入ってから急に利上げと資産圧縮を急ぐとは考えにくい。以前には、自身の強気発言で株価が急落し、それに悩んで体調を壊し、一時的に表舞台から身を隠したような状態になったとされる繊細な人間である。

このように考えると、いまのFRB関係者の強気発言を、そのまま真に受けてはいけない。また、昨年の夏を思い出してほしい。やはり、当時もイエレン議長を含め、多くのFRB関係者が利上げに関して声高にその可能性を示唆した。しかし、市場での利上げ確率は一向に上昇せず、結果的にFRBがもくろんだ9月のFOMCでの利上げは、見送らざるをえなかった。

このように、現在のFRB関係者の利上げに関する言及は、利上げありきではなく、あくまで市場に利上げしてよいかを問いかけているにすぎない。その結果、市場での利上げ確率が上がらなければ、結果的に利上げを見送るだけのことである。

金価格は、インフレリスクが意識されても上昇する

無理に利上げをして、株価が下げてしまえば、景気悪化への道に進むリスクも高まる。これは、米国にとって最悪のシナリオである。原油安を背景に、インフレが上がってこない中で利上げを市場に織り込ませることはかなり難しい。

こう考えれば、FRBによる穏やかな、無理のない利上げと資産圧縮は、リスク資産の価値向上に相応の寄与をするものと思われる。本欄でも以前指摘したように、筆者はリスク資産が2019年ごろまで堅調に推移するとみているが、その背景のひとつにFRBの金融政策による下支えがある。米国にとっては、ドル安ぎみの為替相場の状態が好ましく、さらに原油相場が適度に上昇するのであれば、さらによいと考えているはずである。

その場合には、金相場は下値が支えられながら、堅調な推移を続けるだろう。一方、原油価格が急激な上昇に転じた場合には、今度はインフレリスクが意識され、金はヘッジとして買われる可能性がある。

このように、金は相場としてみるのではなく、あくまで資産の一部としてとらえておくと、その保有する必要性が理解できるだろう。重要なことは、上記のように金融政策の方向性が不透明な状態のときこそ、金を保有しておくことを検討すべきということである。

金は相場としては強い動きが続くとみており、現在1トロイオンス=1240~1250ドルで推移している金価格は、年末には10%程度上昇、1375ドルを付けるとの見方もまったく変わらない。金相場は、夏場から秋口にかけて下値切り上げの動きが顕著になり、さらに年末にかけて大相場を形成することになりそうである。

江守 哲 コモディティ・ストラテジスト

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えもり てつ / Tetsu Emori

1990年慶應義塾大学商学部卒業後、住友商事入社。2000年に三井物産フューチャーズ移籍、「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」としてコモディティ市場分析および投資戦略の立案を行う。2007年にアストマックスのチーフファンドマネージャーに就任。2015年に「エモリキャピタルマネジメント」を設立。会員制オンラインサロン「EMORI CLUB」と共に市場分析や投資戦略情報の発信を行っている。2020年に「エフプロ」の監修者に就任。主な著書に「金を買え 米国株バブル経済の終わりの始まり」(2020年プレジデント社)。

 

 

 

 

 

 

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