「毎月分配型」投信が持つ好印象と裏腹な欠陥 資金流出が加速している背景を知っておこう

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定期預金からの転換に際して、毎月分配金が出ると言われれば、なぜか大半の人は「安全な商品」だと勘違いしてしまう。

しかし、そんな毎月分配型にも逆風が吹き始めたきっかけが、昨年秋に金融庁が発表した「平成27事務年度 金融レポート」だろう。毎月分配型投資信託を暗に指して、「顧客の運用方針にかかわらず、販売会社は、主として収益分配頻度の高い商品を提案している」「一般に利益を分配せずに再投資するほうが投資効率は高くなるとされている。(中略)必ずしも顧客のニーズに沿った対応がとられていないことの1つの証左ではないかとも考えられる」と記されている。

これは監督官庁である金融庁が明言こそしていないものの、毎月分配型は資産形成に不向きであると問題視していることの裏返しだ。そんな金融庁の方針を受けて、販売する側も自粛したのかもしれないが、冒頭で示したとおり、毎月分配型の投資信託から資金が流失する流れも起こっている。

本来、投資信託は運用効率の高さを追求しなければいけないのだが、毎月分配型は毎月資金を解約して投資家に分配する仕組みになっている。簡単に言うと、運用には「複利効果」が重要だ。元金によって生じた利子をさらに次期の元金に組み入れる方式なのだが、毎月分配型では複利効果が狙いにくいという致命的な欠陥がある、ということだ。運用期間が長期になればなるほど、その影響が出てくるともいわれる。

米国にもある毎月分配型は運用益からの払い出し限定?

実際に投資信託の「リターンランキング」などを見ると、その違いは明らかだ。モーニングスターのリターンランキングを見ても、全ファンドで検索すると3年、5年、10年の期間で、いずれも毎月分配型ファンドはベスト20にひとつもランクインしていない(2017年7月14日現在)。その差は歴然といっていいだろう。

ちなみに、毎月分配型だけに絞ってリターンランキングを調べると、第1位は「野村 日本ブランド投資信託(アジア通貨)毎月」で、5年間のトータルリターンは年率換算で25.22%だった。

これはこれですばらしい運用成績だが、そのほかにも上位にランクインしている毎月分配型ファンドの多くが、米ドル、ルピア、レアルといった通貨を選択しているもので、円安の恩恵を受けやすいものになっている。円安でたまたま大きな収益を上げているにすぎない、と見たほうがよさそうだ。

そもそも日本のメディアは、以前から毎月分配型は日本特有のものであり、ガラパゴスファンドといったとらえ方をしてきた。しかし、実は米国にも毎月分配型は存在しているし、米国最大級の債券ファンドを運用する「Vanguard」 や「PIMCO」には毎月分配型のファンドがある。さらに、四半期分配型のファンドも数多く存在する。

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