「毎月分配型」投信が持つ好印象と裏腹な欠陥 資金流出が加速している背景を知っておこう
ただ、米国と日本の大きな違いは、ファンドが実現させたインカムゲイン(分配収益)やキャピタルゲイン(売買益)の90%は、毎月、もしくは四半期、半年といった具合に定期的に分配しなければならないと法律で決められている(401k等は除く)。さもなければ法人所得課税が課税される、という厳しいルールだ。日本の不動産投資信託「J-REIT」にも同様のルールが決められている。
さらに、米国の投資信託は分配金を出す、出さないという判断は、原則として運用会社に委ねられている。日本のように分配金を1度出すとしたら、何が何でも出さなくてはならない仕組みにはなっていない。
運用より分配金優先の「目標払い出し型」?
日本の毎月分配型も、当初は実現できた配当や売買益などの運用益から、毎月もしくは隔月の分配金を支払う形だった。それが、いつしか運用益だけでは賄いきれない分配金を「投資家が預けた資金=元本」から支払い続けるものに変化していく。
さらに、リーマンショックから回復しつつあった時点で販売開始されたのが「目標払い出し型」と呼ばれる毎月分配投信だ。運用会社などによって「元本払出型」や「毎月払出型」という言葉を使う場合もある。この目標払い出し型は、ファンドの元本を取り崩すことに躊躇せず、一定期間、設定した分配金を毎月支払うことを約束したファンドだ。
言い換えれば、運用成績よりも毎月分配金を支払うことを優先したファンドといっていい。運用期間を一定期間置き、約束した分配金をきっちり支払うタイプのものと市況に合わせて分配金を変更するものもある。いずれにしても、このタイプの毎月分配金は元本がなくなることも覚悟のうえで投資する必要がある。一時期、複数のメガバンクが積極的にこの目標払い出し型を販売していた時期がある。
一方、同じく2012年後半から設定され始めた毎月分配型に「予想分配金提示型」という商品もある。その名が示すように、将来分配できそうな水準を予想して分配金を支払うタイプの投資信託で、たとえば「ダイワ 豪ドル建て高利回り証券F分配金提示型」という同タイプの毎月分配型は、分配金を計算する前営業日のファンドの基準価額が、1万0500円以上1万1000円未満であれば分配金は100円。同じく1万1000円以上1万1500円未満なら分配金は150円という具合に決まる。
分配金に関しては、ある意味で非常に透明性が高い、というわけだ。とはいえ、このタイプの毎月分配型は数が少ない。また、目標払い出し型も投資家にあらかじめ告知したうえで販売を開始したものの、そう大きな存在にはなっていない。
結局、従来のような毎月受け取っている分配金が、運用益から出たものなのか、元本を取り崩して払い出されたのかが、いま一つ不透明なままの商品が相変わらずメインになっている。
金融庁が指摘したように、少なくとも毎月分配型は運用によって元本を増やすタイプの金融商品ではないことを認識しておいたほうがいい。少なくとも、退職金の運用や老後資金の運用には向いていないだろう。
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