「毎月分配型」投信が持つ好印象と裏腹な欠陥 資金流出が加速している背景を知っておこう
そんな状況の中で、近年指摘されてきたのが毎月分配型投信の運用効率の悪さだ。実際、日本の投資家が運用で利益を上げられない原因のひとつとして「毎月分配型投信」を指摘する専門家も多い。ガラパゴスファンドと揶揄されてきたのも事実だが、その反面で爆発的な売れ行きを見せてきた。
年金給付の補助として生まれた毎月分配型!
もともと毎月分配型が登場してきたきっかけは、1997年に外資系運用会社が組成して販売した海外債券投資ファンドだったとされている。先進国の安定した高利回り債券を組み込み、毎月分配金を出すタイプの投資信託だ。
当初は、年金受給者向けに2カ月に1回の年金受給をサポートする投資信託として普及していく。周知のように、公的年金など年金の多くは偶数月に給付されるが、奇数月にも給付金があるように、隔月ごとに分配金が出るタイプの投資信託が数多く組成された。
そのうち、国民的投資信託といわれた国際投信の「グロソブ」が登場し、5兆円を超える資金を集めた。金利水準が高かった当時、先進国のソブリン債に投資することで、安全な債券から得られる高額の配当金を原資として、高い分配金を支払うことができた。
さらに投資信託の販売ルートの規制緩和などもあり、メガバンクや地方の中小金融機関、生命保険会社なども毎月分配型を積極的に販売していく。
グロソブのヒットに端を発して、毎月分配型は大ヒットする。投資信託の純資産額ベスト10のうち、毎月分配型が8~9本という状態が長い間続いたのを筆者も覚えている。現実に、投資信託のレーティングで知られる「モーニングスター」のデータを見ると、現在でも純資産額トップ20のうち6本のファンドが毎月分配型になっている(2017年7月14日現在)。
毎月分配型のシンボルでもあったグロソブだったが、リーマンショックによる円高から基準価格を大きく下げて分配金も減額。純資産額も大きく減らしていく。とりわけリーマンショック直後には、投資信託で儲かっている投資家は1人もいないのではないか、とさえ言われるような状況に陥る。
その後、リーマンショックで急落した株式市場や為替市場は持ち直したものの、先進国のソブリン債に投資する投資信託は急減。ギリシャショック以降、各国はさらなる金融緩和政策に進み、債券の金利はゼロに近づいていく。
投資信託業界は、市場の大きな変動ごとに進化を遂げていく。「通貨選択型」といった新たなスタイルの投資信託などが次々と登場した。毎月分配型の設定は減少していくかと思われたものの、なぜかその設定は続き、現在もなお投資信託の主流商品のひとつになっている。
毎月分配型がなぜここまでヒットして、長期にわたって販売され続けてきたのか……。その背景には、販売する側の事情がある。毎月分配金が出ることが「売り」となって、投資信託本来の目的である運用に関連するさまざまなリスクをカムフラージュできたからだ。
日本人が資産運用に対して長い間拒否反応を示し、きちんと金融リテラシーを学んでこなかったことも大きな原因だが、銀行や郵便局といった定期預金や定期貯金などの元本保証型の金融商品しか扱ってこなかった金融機関が市場参入したことも大きい。
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