「会ってみたら、旅や音楽の話ですごく盛り上がりました。私たちは日本のロックが好きで、特に彼はブルーハーツのファン。『ヒロトとマーシーが好きな人に悪い人はいない』なんて熱弁を振るっていました。私は誠一さんを人間的に尊敬しています。まっとうで、真っ直ぐな、いい人です。この人とはずっと一緒にいたほうがいいな、と感じました」
最初から意気投合したことは誠一さんも認める。
「趣味が合ったとしても、話のペースやノリが合わない人もいますよね。妻とは趣味もノリも合います」
厳しい環境になぜ耐えられるのか
しかし、冒頭で書いたように2人の新婚生活は厳しい環境である。自ら望んで修行をしている誠一さんはともかく、涼子さんはなぜ耐えられるのだろうか。
「私たちは2人とも自立しているからです。親の寺を継ぐしかないお寺の子どもとは違って、その気になれば1人で生きていける力があります。だから、夫婦の間さえうまくいっていれば、どこにいても大丈夫なんです。こう自分に言い聞かせないと絶望してしまうのもありますけど……」
弟子の身はつらい。その妻の立場はもっとつらい。しかし、苦しいからこそ2人の仲の良さが際立ち、かけがえのないものとして輝く。10年後に振り返ったとき、今の生活は夫婦の大切な思い出として昇華されていることだろう。
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