「低所得者向け減税」が米国経済を救う理由

カリフォルニア州の例が物語っている

米国で働く約2800万人の低所得者は現在、年平均で2500ドル(約28万円)をEITCによって受け取っている。2013年だけで、推計650万人(うち330万人は子ども)を貧困から救い出し、2100万人の貧困状態を緩和した。EITCがなければ、貧困状態の子ども数は25%多くなっていたことだろう。

米国はEITCの拡大を強く必要としている。2015年において、貧困世帯で暮らす子どもの割合はドイツや英国が10%未満であるのに対し、米国は約21%だった。子どもの貧困は道徳的に問題であるだけでなく、将来所得の喪失、犯罪の増加、医療費高騰によって米国経済に年間約5000億ドル(約57兆円)、GDP比で4%近いコストが発生すると推計される。

規制緩和で対象世帯を3倍増に

カリフォルニア州は同州EITCの対象所得ラインを1.4万ドルから2.3万ドルに引き上げる予定で、基準緩和によって対象世帯数を現在の3倍近い170万世帯へと増加させる見通しだ。

また同州の最低賃金は2022年までに時給15ドルとなり、全米一となる見込み。反対にカンザス州は、今も時給7.25ドルの連邦最低賃金に固執している。インフレを加味すると、レーガン政権時代より2割低い水準だ。それでも、トランプ大統領と共和党幹部は、連邦最低賃金の引き上げに反対している。

EITCは低所得者支援の政策であるため、賃金押し下げ圧力となりうる。だが、より高い最低賃金と組み合わせれば、弱点は中和される。こうした理由から、カリフォルニア州は、同州EITCの拡大と並行して最低賃金の段階的引き上げを計画しているのだ。

最低賃金を引き上げれば、低所得者の雇用が失われるとの批判もある。だが、最低賃金引き上げは雇用にほとんど悪影響を与えないことが、研究によって明らかになっている。トランプ大統領はカリフォルニアの経験に学ぶべきだ。

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