大人気「ハンドスピナー」は異例ずくめだった どのように生まれたか、よくわからない?

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ただし、ハンドスピナーがどのようにして生まれたのかは、メーカー側としてはよくわかっていないようだ。「『重症筋無力症の子どものために考案された』、『特許の失効が流行の要因になった』という説はあるが、どこまで本当なのかは把握できていない」(メガハウス・メディア戦略部の板垣有紀エキスパート)。

このハンドスピナー、国内外問わず大小さまざまなメーカーが製造・販売を行っている。とはいっても、偽物がはびこっているわけではない。製造に当たり特許などの制約がないため、製造自体は誰でも可能なのだ。値段も数百円から1万円以上のものまでさまざまだ。

ベアリング最大手、日本精工グループまで登場!

2016年末ごろから米国でブームが始まり、今年春にかけて社会現象となっていった。日本で流行し始めたのは4月ごろ。ユーチューバーが紹介したことなどがきっかけで子どもの間で人気に火がついた。6月に開催された「東京おもちゃショー2017」の一般公開日における展示では、終日、ハンドスピナー目当ての行列が途切れなかったという。

中央部を持ってひたすら回す。遊び方は極めてシンプルだ(撮影:今井康一)

今後は玩具メーカー以外も参入予定だ。7月にはコンピュータ周辺機器メーカー大手のエレコムが参入を発表している。

ベアリング国内最大手である日本精工のグループ会社、NSKマイクロプレシジョンは持ち前の技術を生かし、12分以上の回転が可能な超高性能のハンドスピナーを開発した。8月以降、ヨーヨーショップスピンギアで発売予定だ。

一方、問題として浮上しているのが安全性だ。特に懸念されるのが、本体の破損で飛び出たベアリングを子どもが誤飲すること。安全性に配慮して造られている製品も多いが、多くのメーカーが製造しており、品質を管理する機関もないため、すべての製品が安全とはいいがたい。

安全性への懸念を払拭できたとしても、ブームがいつまで続くかはわからない。新ジャンルの玩具のヒットを長続きさせるのは難しく、業界では「2回冬を越せばロングヒット」といわれるほどだ。

少子化の影響などもあり、大ヒット商品が生まれにくい環境にある玩具業界。その中でハンドスピナーにかかる期待は大きい。今後、定番商品の座に就くことができるのだろうか。

渡辺 拓未 東洋経済 記者

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わたなべ たくみ / Takumi Watanabe

1991年生まれ、2010年京都大学経済学部入学。2014年に東洋経済新報社へ入社。2016年4月から証券部で投資雑誌『四季報プロ500』の編集に。精密機械・電子部品担当を経て、現在はゲーム業界を担当。

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