そのストレッチが実は「筋力低下」を招くワケ

健康科学の「最新常識」知っていますか?

だが、そうではなかった。

「あれから150本から200本の論文が発表され、おそらくその8割が、静的ストレッチは運動に逆効果になることを明確に示しています。そのうえ、あとの2割は良くも悪くもなんの効果もないことを示しています」と、ヌードソン教授は語っている。

すべてのストレッチが悪いわけではない

同教授の論文が正しかったことを裏付けるその後の研究の中から、いつくかの例を紹介しよう。

2013年、『ジャーナル・オブ・ストレングス・アンド・コンディショニング・リサーチ』に発表された研究によれば、17人の運動選手にバーベルスクワットを行ってもらったところ、事前に静的ストレッチをした場合、最大反復回数は8%落ちたうえ、下半身の安定度が23%落ちた。

また、ザグレブ大学の研究者たちが100本以上の論文に目を通した結果、静的ストレッチは筋力を平均5.5%弱めることを発見した。さらには、「同じ姿勢を90秒間保つストレッチを行なうと、筋力が一層弱まる」こともわかった。

原因についてはまだ研究段階だが、静的ストレッチが筋力を下げるという紛れもない実験結果はある。一説によれば、静的ストレッチは関節可動域を広げるが、同時に関節を緩めてしまう。重い物を持ち上げようとするときに、ひざがしっかりロックされていないと持ち上がらないように、関節の「緩さ」は筋力を使う際には障害となる可能性があるのだ。また、静的ストレッチは筋肉の緊張を取る効果はあるが、その分、脱力してしまい、パフォーマンスにつながりにくいともいわれている。

とはいえ、もちろん、すべてのストレッチが良くないというわけではない。問題なのは、私たちが体育の授業で習ったような静的ストレッチだ。たとえば、立ったまま徐々に腰を曲げ、爪先に触れる前屈のようなものを含んだ、いわゆる準備運動として教えられたストレッチである。

「ごく普通の柔軟性を維持したいのなら、静的ストレッチは有効だ。しかし、運動前にストレッチをするなら、ウォームアップになるようなものが必要となる。温まった筋肉組織は強くなり、より多くのエネルギーを吸収する」と、ヌードソン教授は言う。

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