CIAの情報分析は誰でも応用できる手法だ

あふれる情報におぼれないための5ステップ

だが、そこにわなが潜んでいた。最初に立てた問いが不完全だったのだ。チームは、アメリカに住むソマリア系移民の若者を、ジハード戦士としてソマリアに送り込むネットワークの存在を、見落としていた。その結果、ミネアポリスの高校に通っていた米国籍の青年が、ソマリアで自爆テロを起こした。送金ネットワークにばかり気を取られ、限定的な捜査しか行っていなかったために、この悲劇を防げなかったのだ。正しい問いを見いだす手間を省いてはいけない。

専門家は、単純な「はい/いいえ」で答えられる問いに引きずられがちだ(「中東のさる国で独裁者は生き延びるか?」「北朝鮮はICBM開発に成功するか?」「経済は強気相場と弱気相場のどちらに向かうか?」など)。ここにも落とし穴がある。優れたアナリストはこうした二者択一の問いを避け、複雑な分析に適した問いを立て直す(「日本人は北朝鮮のミサイル攻撃を案じるべきか?」ではなく、「日本人は北朝鮮のミサイル攻撃をどの程度、案じるべきか?」「個人としてどの程度、案じるべきか?」など)。

この訓練には、自分の母親でも理解できるくらいわかりやすく、問いをシンプルな一文に落とし込む「ママに電話で話す」練習と、関心のある分野で話題になっているテーマについて段階的に問いを深めていく「思考ゲーム」(「野球界にとってフリーエージェント制度はよかったか、悪かったか?」→「なぜそれが球界の将来に重要な影響を及ぼすのか?」など)が有効だ。

重視する項目の数は6〜10個

2)「重視する項目」を設定する

たとえば、家族が増えたので、新しい車に買い替える場合を考えてみよう。チラシやインターネットでやみくもに情報(データ)を調べ始めたら、あっという間に何時間も無駄にしてしまう。最初に重視する項目を設定することが肝要だ。新車購入の例でいえば、「コスト」「信頼性」「チャイルドシートの置きやすさ」「安全性」「サイズ」「燃費」などだ。これは洗濯物(問い)を仕分ける「かご」のようなもので、重要な問いを評価する際に私たちを導く枠組みである。

重視する項目を設定したら、データを振り分けていく。これらの枠組みを設定することで、余計な複雑さを減らすことができる。コツは、重視する項目の数を6〜10個の、手に負える数に制限すること。ただし、それが十分に網羅的でないと、分析の方向を誤る。設定する項目が適切かどうか、つねに立ち返る必要がある。

3)実績(パフォーマンス)を測定する「尺度」を決める

分析を進めるにあたり、自分が正しい道を歩んでいるかどうかを確かめられる「尺度(メトリクス)」を重視する項目ごとに決めておく。いわば、道路脇のガードレールのようなものだ。テロの脅威情報を分析するなら、「アメリカでのテロ攻撃の件数」「わたしが住む都市が標的として優先度が高いか」「テロ容疑者の逮捕件数が、脅威の高まり、あるいは低下を示しているか」などである。

どの分野でもそうだが、専門家はえてして自らの積み上げてきた知識に固執し、新たな変化の兆候を見誤る。だが、尺度を決めておけば、こうした「専門知識のわな」に陥ること、つまり、情勢の変化に気づかずに自ら「ゆでガエル」になってしまうことを防いでくれる。たとえば、40年以上前に米東部デトロイトの自動車メーカーが米国内の市場シェアをめぐってしのぎを削るあまり、より安くて燃費の良い車種をそろえた日本企業の攻勢を見落としていたように。

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