「スマホを残して死ぬ」ことで起きる深刻問題

個人情報を遺族が見ることを想像しているか

デジタル遺品は、オンラインとオフラインに区別して考えるとわかりやすい。オンラインで特に注意するべきなのは、高額の取引がなされる可能性があり、価格変動リスクを抱える、株やFXに関するものだ。家族に内緒でネット証券の口座を開き、資産運用をしている人も少なくないが、急死してしまうと残された遺族はそういったリスクはおろか、そもそも取引自体の存在にも、気づくことができない。相場が大きく変動しているのに手を打つことができず、資産が大幅に目減りしたり、場合によっては多額の追加証拠金を負担することもありうる。

さらに、今後特に問題となりそうなのが、普及するポテンシャルを秘めている仮想通貨だ。たとえばビットコインは、本人しか知らない秘密鍵が不明になると、財産がすべて消滅したのと同じ状態になる。伊勢田弁護士は「金融に関する取引は、相続財産にも大きな影響を与えることになる。遺産の網羅性の問題や損失が出た場合の責任問題等、相続人間での紛争の火種にもなる可能性が高いため、優先して確認したほうがいい」と警鐘を鳴らす。

写真や仕事の資料にアクセスできなくなることを防ぐ

「相続で苦しめられる人を0に」というミッションを掲げ活動する伊勢田篤史弁護士(写真:山本真也)

一方、オフラインのデータで重要なのが、書類や写真。残された遺族は、思い出の写真を見たいと思っても、どのデバイスに入っているのかを知らなければ探しようがない。また、もしデバイスを特定できてもパスワードがわからなければ見ることができなくなってしまう。さらに、仕事の情報についても注意が必要だ。「特に、会社等の組織が管理していないパソコン等で仕事をしているフリーランスの方は、事前にパスワード等の情報を残しておかないと死後にデータを引き継ぐことができず、取引先に迷惑をかけてしまうおそれがある」(伊勢田弁護士)。

逆に、残しておかないほうがよいものもある。次の事例のように、うっかり処理を怠ったために、長年連れ添った配偶者を苦しめ続けることにもなってしまうこともある。

Aさん(60代・女性)夫婦は、2人で毎月旅行をする仲の良い夫婦だったが、夫が急死してしまう。妻が夫のパソコンを確認すると、さまざまなデータがフォルダごとに整理されていたが、その中に「シークレット」と名前の付いたフォルダがあった。妻が気になって開いてみると、そこには夫が若い不倫相手と旅行したときの写真が映し出された。

それだけでもショックだが、これに追い打ちをかける事実が明らかになる。Aさんは、夫と不倫相手が映る写真の景色に、どこも見覚えがあった。しかも日付を見ると、夫婦での旅行をした後に撮影されたもの。夫は、妻であるAさんを、不倫相手との旅行の下見に連れて行っていたのだ――。

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