不動産価格暴落を招く「街の縮小計画」の悲劇 地方だけじゃない!世田谷でもリスクはある

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縮小

まず、不動産価格の将来的な資産性は見込めないと覚悟しておこう。上下水道のインフラ修繕は後回しとなり、やがては修繕すら行わないということになる可能性が高い。ゴミは区域内まで運んで捨てなければならなくなるだろう。除雪も自己責任で行うしかない。

そうするうち、区域外に住む人はどんどんいなくなり、最後には無居住化するだろう。空き家もわざわざ取り壊すことはなく、犯罪の温床となり荒廃した街になろう。

都市部だからといって、無関係な話ではない

さて、こうした未来は都市部には無関係だと思われる向きも多いのではないだろうか。ところがそうではない。東京23区内であっても安心はできない。現在は人口増加を続ける世田谷区のような自治体であっても、いつかは人口・世帯減の局面がやってくるし、その際には立地適正化計画を運用しなければならないだろう。

このときに、真っ先に区域外となるのは「災害可能性」のある区域だ。たとえば「土砂災害」の可能性のある区域などは外れる可能性が高い。「浸水」もしかり。浸水というと低地をイメージしがちだが、比較的標高の高いところでもまったく安心はできない。

たとえば前述した東京・世田谷区は、台地部は標高30~50m、低地部は標高10~25mと、比較的高度差のある地勢だが、世田谷区の洪水ハザードマップによれば、2m未満、あるいはそれ以上の浸水可能性がある地域がたくさんあり、そうしたところには現在、多くの住宅が立ち並んでいる。

なぜ標高が高いのに浸水する可能性があるのか。それは「集中豪雨」によるものである。東京をはじめとする都市は一般的に、雨水の排水能力について、1時間当たり50~60㎜の降雨量が想定されている。ところが、昨今の集中豪雨は1時間当たり80㎜、100㎜となることも決して珍しくない。

こうしたときには雨水を排水しきれず、あふれ出た雨水が、周辺に比して相対的に低いところに集まってしまうのだ。人間の平均身長よりはるかに高い2mもの浸水に見舞われては、ひとたまりもない。したがってこうした地域は、立地適正化区域外になる可能性が最も高いのだ。実際、これまでに策定された区域案を見ると、こうした地域はほぼ例外なく区域外とされている。

現在時点では、こうした浸水可能性のあるエリアとそうでないエリアにおいて不動産の資産格差は見られないが、やがては天地ほどの差が開く可能性が高いことを踏まえておこう。

長嶋 修 不動産コンサルタント(さくら事務所 会長)

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ながしま おさむ / Osamu Nagashima

1999年、業界初の個人向け不動産コンサルティング会社『株式会社さくら事務所』を設立、現会長。以降、さまざまな活動を通して“第三者性を堅持した個人向け不動産コンサルタント”第一人者としての地位を築いた。国土交通省・経済産業省などの委員も歴任している。主な著書に、『マイホームはこうして選びなさい』(ダイヤモンド社)、『「マイホームの常識」にだまされるな!知らないと損する新常識80』(朝日新聞出版)、『これから3年不動産とどう付き合うか』(日本経済新聞出版社)、『「空き家」が蝕む日本』(ポプラ社)など。さくら事務所公式HPはこちら
 

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