320万部「女性の品格」は、こうして生まれた 上司の「誘い水」が優秀な部下を育てる

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私はこの話をいろいろなところで話し、著書にも書いています。そのためご存じの方も多いと思いますが、松下幸之助さんからの強烈な「誘い水」は、「わしの言うとおりにやるのであれば、キミは要らん」というひと言だったのです。「自分の言うとおりにやれ」というのが普通だと思います。それを「自分の言うとおりにやるな」という。そこで私は、ハッと気がついた。そうか、松下さんの指示以上のことをやれ、やるように、ということがわかったのです。

そこから、私は、松下さんに一つひとつ確認しながら、PHP研究所における商品の多様化、事業の拡大を積極的に進め、それなりの成果を年々挙げることができました。その誘い水のひと言がなければ、相変わらず成長発展もせず、赤字経営を続けていただろうと思います。

釣り糸を固めてマットレスを製造

これは、部下との話ではありませんが、私は全国5カ所で、経営者塾を持っています。その中で、20年の歴史を持ち、現在150人の会員(卒塾生は延べ1000人を超えると思いますが)が参加している「壺中の会」がありますが、この会から、さまざまな著名な若い経営者が育ち、活躍しています。13年ほど前ですが、ひとりの会員が、伯父の経営する、釣り糸をつくっている赤字会社を引き受けることになりました。

すでに、父親の経営する会社の社長であったと思いますが、彼は「二足のわらじで大変ですよ」と言いつつ、「釣り糸では、これからはムリですね」と戸惑いながらの表情で、「どうすればいいのか、思案しているところですが」と言ってきました。そこで、私もよくわからないままに「釣り糸ではね。それよりも、その釣り糸を固めてなにか考えてみたら」と話をしたところ、やがて「固めるといういいヒントをいただき、ありがとうございました」と言いつつ、「実は、それでマットレスをつくることにしました」。

私も感心したのですが、私の何げない「固める」という話が、いわば「誘い水」になったのは、多分、確かなことだろうと思います。それからの成長発展は目覚ましいものがあります。その会社のマークは、ですから、釣り糸が固められたようなものになっています。

ずいぶん前の話ですが、アメリカのブラインドメーカーの営業責任者が、なかなかブラインドが売れずに悩んでいました。会社全体の業績も悪化するばかり。なにか手を打たなければと思いつつ、社長と話をしていると、社長が「うちはブラインドをつくっているけど、まあ、明るさを調節するということだよね。ブラインドではなく、明るさを調整するというものはほかにないだろうか」と言う。

そこで営業責任者は、いままでブラインド、ブラインドと、そのことばかり考えていましたが、その社長のひと言で「そうか、うちは明るさを調節することが本業なのだ」と思いつき、そこで社長に「これから、照明器具を製造することにしましょう」と提案。社長もこれを是として、ブラインドメーカーから照明器具会社に変身して、大きな成功を収めたということを聞いたことがあります。これもやはり、社長の「誘い水」があればこそということになるのではないでしょうか。

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