出口見えない「異次元緩和」に潜む恐怖の未来 景気悪化や超円安、超インフレもありえる
③日銀の信用度が低下し日銀券が売られる(超円安を招く)
米国や欧州がやろうとしている出口戦略を採れないとすればどうなるのか。もうひとつのわかりやすいシナリオは、日銀のバランスシート拡大によって「日銀券」の信用が失墜することだ。円の価値が下落し、長期的な円安になる可能性がある。
1ドル=200円とか300円の水準になれば、当然ながら輸入インフレが襲い掛かり、日本の物価は跳ね上がる。ただし、黒田日銀総裁がドル円相場の限界点を「1ドル=125円」と発言してしまったために、現在も「黒田ライン」として上値抵抗線になっている。
しかし、昔からGDPの2倍を超えるような莫大な財政赤字を抱えた政府が、戦争なしで無傷で回復した事実は一度もない。最もオーソドックスな結末だが、国民生活に与える影響は計り知れない。安倍政権の狙いは、このシナリオを実現させることではなかったのか。意図的なインフレによる財政赤字の解消だ。
④金融システム不安が表面化する(金融不安が勃発)
中央銀行のバランスシートが拡大していく過程で予測される危機のひとつに、金融システム不安がある。実質的な財政ファイナンスがすでに実施されていることを金融市場が認めざるをえなくなったとき、投資家が次に心配するのは政府発行債券(国債)の「デフォルト(債務不履行)」だ。
実際に、日本政府の国債がデフォルトに陥ることは外貨準備高が多く、外貨資産をたっぷりと保有している民間企業や家計(個人投資家)の現状では考えにくい。ただし、銀行などの金融機関は別だ。
国債の格付け下落やリスクウエートの上昇によって、金融機関にデフォルトの危機をもたらす可能性がある。金融システムの不安定化が常態化し日本全体に悪影響をもたらす。
政府の財政赤字拡大の道具になった中央銀行
日本政府の財政赤字の拡大は留まることを知らない。日銀が、どんどん国債を買い支えてくれるからだ。2020年にはプライマリーバランスを黒字化させることを、安倍政権は「骨太の方針」として明記し、毎年閣議決定しているが、本気でできると思っている投資家は1人もいないはずだ。しかも、2017年の骨太の方針では「消費税」の文字が消えた。
財政支出を抑える=財政規律の重視を尊重するEU(欧州連合)に対して、安倍政権はアベノミクスと称して財政規律の緩和を推進。株価を上げて、支持率維持の道具として使った。
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