出口見えない「異次元緩和」に潜む恐怖の未来 景気悪化や超円安、超インフレもありえる

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現在、日銀がやっている量的緩和は、実質的に財政支出を中央銀行が紙幣の増刷で引き受ける「財政ファイナンス」の状態といわれるが、安倍政権も中央銀行も、かたくなに否定し続けている。しかし、財政ファイナンスという名のヘリコプターマネーはすでに離陸済みであり、いま論ずるべきは現在の量的緩和、マイナス金利をいつやめるのか。「出口戦略」の時期についての議論をすべきときに来ているともいわれている。

もともと、財政法は第5条で日銀の国債引き受けを禁止しているが、政府は日銀による巨額の国債買い入れは「財政法第5条に抵触するものではない」という答弁書を2015年7月27日の閣議で回答しており、財政ファイナンスに該当するかどうかについては、すでに解決済みというスタンスをとっている。

財政ファイナンスではないとすると、現在の年間80兆円超もの国債などの買い入れはいったい何なのか……。インフレ率2%の達成を目指すというにもかかわらず、その効果は4年も経過するのに実現できていない。

安倍政権は、日銀の理事をあえて巨額の財政出動を積極的に推し進める「リフレ派」をそろえることで、実質的なヘリコプターマネーを実現した。にもかかわらず、現時点ではインフレ率2%の達成にはまだほど遠い。2017年4月の生鮮食品及びエネルギーを除く総合の消費者物価指数は「0.0%」。人口減少時代を迎えて雇用市場だけは好調だが、賃金が上がらずアベノミクスは停滞を余儀なくされている。

黒田日銀総裁は、バーナンキ氏が目の前で懺悔したにもかかわらず、講演でも「大切なことはやり遂げることだ」と述べ続けている。安倍政権が続くかぎり、日銀の「出口戦略」は実現されない可能性が高く、このまま日銀が量的緩和、マイナス金利政策を続けたらどうなるのか……。

一方、世界は大きく方向転換しつつある。一足早く量的緩和を辞めて、金利引き上げを実現させた米FRBをはじめとして、6月27日にECB(欧州中央銀行)の年次総会でマリオ・ドラギ総裁が、はじめて量的緩和縮小(テーパリング)の可能性を示唆した。

イングランド銀行のマーク・カーニー総裁も「向こう数カ月」以内には金利引き上げの検討に入ると発言。カナダ中銀のスティーブン・ポロズ総裁もカナダの金利を「異常に低い」と指摘して金利引き上げの可能性を示した。

つまり、日銀だけが先進国の中で量的緩和を続けることになるわけだ。加えて、都議会選挙での自民大敗は「アベノミクス終焉」の可能性を示唆している。物価の番人であり、金融システムの番人でもある日銀は、今後どうするのか……。

財政ファイナンスに手を染めた政府は必ず破綻する?

現実問題として、日銀がこのまま日本国債やETF、REITを買い続けていった場合、何が起こるのだろうか。中央銀行の場合、そのバランスシートが「健全さ」のバロメーターのひとつとなっている。

米FRBは、そのバランスシートの正常化をスタートさせると宣言している。バランスシートを無制限に拡大することは望ましくない、ということをFRBが突き付けたと言っても過言ではないだろう。

にもかかわらず日銀は、出口戦略に対して明言せず、また量的緩和縮小によって何が起こるのかの検討もせずに、ただ漫然と異次元の量的緩和を続けている。

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