「捨て犬」「殺処分」がなくならない本当の理由 業界を知り尽くした男が語るペット流通の闇

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また、いちばん気の毒なのは、ペットショップで大型犬の子犬が衝動買いされる場合です。

大型犬でも子犬のうちはまだ小さく、ぬいぐるみのようにかわいいものです。ところが、大型犬は半年もすると急速に大きく育ちます。毛色が大きく変わることもあります。

「かわいい」というよりも「強そう」といったほうがいい姿になると、「こんなはずじゃなかった」と戸惑う人もいるのです。

大型犬は体力もありますから、狭い場所では飼えませんし、散歩では飼い主さんの体力を必要とします。それで持て余して、捨ててしまう人がいるのです。

また、中にはもっと身勝手な人もいるようです。

たとえば、いろいろな犬種が混ざった血統の子犬が売られることがあります。すると、子犬が大きくなると、自分の考えていたのとは違う見た目に育って、「こんな姿になるとは思わなかった」と捨ててしまう人がいるのです。

このほか、しつけをしっかりできず、ムダ吠(ぼ)えするのに困り果てて捨ててしまう身勝手なケースもあります。衝動的にペットショップで犬を買っておいて、自分の思っていたのと違うからと捨てるのは、犬を飼うという自覚に欠けていると思うのです。

かわいらしいから、という動機で犬を飼うことは、私個人としてはあってもいいと思います。けれど、犬を飼うのは、ぬいぐるみやお人形を買うのとは違うことだけは、自覚しなければなりません。

自分の犬であるからには、責任があります。その責任を果たす気持ちがないのなら、犬を飼うべきではありません。

欧米のペットショップでは子犬を売らない

子犬がかわいいからと衝動的に買い、面倒になったからと捨てる。

これは買う側だけでなく、売る側にも問題があると思います。日本のペットショップでは、子犬の販売が主な収入源となっていて、「子犬が売れればそれでいい」という態度の店が非常に多く、これが捨て犬を増やしている一因です。

大型犬の子犬を売るのに、成犬になるとどれくらい大きくなるのかさえ、きちんと説明しない無責任なペットショップもあります。たとえば、ラブラドールレトリバーなどは、半年で急激に大きくなり、1年で成犬になります。これに驚いて先述のように捨てるケースもあるのですが、店側がきちんと説明していたかは疑問です。

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