「捨て犬」「殺処分」がなくならない本当の理由 業界を知り尽くした男が語るペット流通の闇

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

つまり、儲かればいいというペットショップが捨て犬を増やしているわけです。子犬の販売は、ただのビジネスであってはなりません。なぜなら、犬はただの物ではなく、命があるからです。

子犬を誰かに渡す人は、必ず、渡す相手に説明する義務があります。そして、命のある存在とともに生きるという自覚を持っていることを確認してから、子犬をその人に託すべきだと思うのです。少なくとも、これは欧米の社会では常識です。

その姿勢がよくわかるのが、ペットショップでの生体(せいたい)販売の禁止です。生体とは、子犬や子猫など、ペットとなる動物のことです。つまり、欧米のペットショップでは、子犬を売ることはしないのです。

では、犬を飼いたい人はどうするのかというと、ブリーダーから直接、譲り受けます。ブリーダーに飼われている母犬のそばで健康的に育った子犬を、ブリーダーと相談して、じっくりと見極めたうえで購入するというのが、欧米では一般的です。

日本でも、ペットショップで子犬や子猫などの生体を販売できないようにすべきだと運動している人たちがいますし、近い将来、そうなるのではないでしょうか。

というのも、現在のペット販売のやり方にはさまざまな問題が指摘されているからです。

売れ残った子犬を殺処分

犬は物ではありません。なのに、お金儲けだけしか考えなくなると、ただの物として扱われてしまいます。

2015年度に国内で販売された犬と猫のうち、約3%に当たる約2万5000頭が流通過程で死んでいたという報道がありました。つまり、売られる予定だった犬や猫の30頭に1頭が、死産でもないのに、売れる前に死んでいたのです。これは、犬や猫を命あるものとしてではなく、物のようにぞんざいに扱った結果ではないでしょうか。

たとえば、これは少し昔のことですが、こんな話がありました。

子犬を販売している店ではどうしても、売れ残る子犬がいます。ペットショップで半年も1年も売れ残っている子犬が出るわけです。そんな子犬を置いておけば、食費ばかりかかってしまうので、生体販売の業者は困るわけです。

「それならば、誰かにタダであげればいいじゃないか」

そう思う人もいるでしょう。確かに、おカネを払って買う人はいなくても、タダなら「飼おうか」と思う人は見つかりそうなものです。

ところが、生体販売をビジネスにしている人たちは、こう考えます。

「売れ残りをタダにすると、値崩れする」

半年、1年待てばタダになると皆が思うようになれば、高いおカネを出して買う人がいなくなるというわけです。売れない子犬を置いておけば食費ばかりかかる。かといって、タダにして引き取り手を探すこともしない。

では、生体販売業者はどうするのでしょうか。

次ページひどい扱いを受けているのは、今でも同じ
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事