質屋アプリ「CASH」が狙いを外した残念な理由 初日に事業中断、斬新ながら詰めが甘すぎた

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ほとんどの人は狐につままれたような顔をしているのが現状ですが、インターネット上では「質屋アプリ」と紹介されたりしています。はたしてこれは「質」なのか、「売買」か「貸金」か。

まずCASHの利用規約4条1項には「本サービスは、甲(運営会社)が乙(利用者)から目的物を買い取るサービスです」とされています。売買だと断言しています。そのために必要な古物商の資格も取っているようです。

ただ、このCASH、やはり普通のサービスとは異なります。利用規約4条4項には「目的物の引渡時期が経過するまでは、乙は、甲所定の方法により申し出ることにより本売買契約を解約することができます。この場合、乙は、甲に対して、売買代金を返金するほか、キャンセル料として売買代金の15パーセント相当額を支払う必要があります。当該キャンセル料は、甲が乙から目的物を買い取り、二次流通マーケットで売却等して得られたであろう利益等を考慮して設定されています」という記載がその内容です。

目的物の引き渡し期間として「2カ月」という長い期間が設定されているうえ、それまでは売買を解約してモノを取り返すことができる、というのがキモ。そこで「キャンセル料として売買代金の15パーセント相当額を支払う必要がある」というのがCASHの特徴です。

利息込みの元本が払えない「質流れ」と同質

そうした実態をみると本件、ぱっと見「質屋」みたい、と感じる人が多いでしょう。通常、高価な時計やバッグ、あるいは衣服を担保にしておカネを手にすることから想像されるのは「質」です。「質屋アプリ」と紹介している記事が多いこともそれが理由でしょう。モノを渡す約束をして、2か月たって「モノを渡したくない」ときには「手数料」を払ってモノを手元に残す、という構造は、利息込みの元本が払えないとモノが質流れしてしまう「質屋」とすごく似た感じがします。

法的にはどうでしょうか。この点、民法345条は「質権者は、質権設定者に、自己に代わって質物の占有をさせることができない」と定めます。占有とは「事実上持っている」というくらいの意味ですが、実際に質草を質屋さんが手にしないで、持ち主が持ったままの場合(「占有改定」といいます)には原則的に質権は成立しない(第三者が持っている場合「指図による占有移転」の場合は質が成立するのでは、というような論点があります)とした規定なのです。

これを「質権の要物契約性」と呼びますが、CASHはそこを回避しています。つまりモノをCASHに送らない状態では理屈上、質は成立しないことになります。従ってよほど原則を捻じ曲げないと質には当たらないことになります。CASHが新しいサービスを目指して工夫した点の一つでしょう。

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