乗り継ぎ時の「初乗り運賃」加算はおかしい

東京の鉄道は今こそ「ゾーン制」を採用すべき

猪瀬直樹都知事(当時)が都営地下鉄と東京メトロの経営統合に力を入れ、九段下駅の都営地下鉄新宿線と東京メトロ半蔵門線のホームの壁を「バカの壁」と呼んで、地下鉄が2社に分かれていることの弊害を社会にアピールをしていたが、その後、経営の統合は進んでいない。

鉄道事業者の数も増える一方だ。りんかい線は東京臨海高速鉄道株式会社、東京メトロ南北線の赤羽岩淵駅から以北は事業者が変わって埼玉高速鉄道株式会社の路線になるなど、新しくできる鉄道が既存の鉄道事業者とは別の事業者によるものが多い。多額の初期費用をそこだけの運賃で回収するため、高運賃になりやすく、また他社線との乗り継ぎや乗り換えで初乗り運賃が加算され、さらに高額になってしまう。

首都圏全域をカバーする「フリーパス」が存在しない

こうした高運賃への対応として、部分的には割引制度がある。最も大きな割引は東京メトロと都営地下鉄の乗り継ぎ割引だ。普通運賃でそれぞれの運賃の合算額から70円引きとなる。また、2社の路線を乗り継ぐ場合のうち、双方が初乗り区間内で短い距離の移動だとより割高感が高まるので、その場合だけ10~30円程度を合算運賃から割り引く区間は多くの路線にある。しかし、最近、首都圏では地下鉄と私鉄等の相互乗り入れが進んでいるが、初乗り区間同士ではない場合こうした割引がないのがほとんどあり、あったとしても数十円程度である。乗り換えがないシームレス化は進んでいるが、運賃のシームレスはほとんど進んでいない。

Sトレインに使われる西武40000系(撮影:尾形文繁)

西武の有料座席指定列車「S‐TRAIN」は西武秩父駅と元町・中華街駅とを結んで週末に運行しているが、運賃に加え、座席指定料金も各社料金の単純加算だ。運賃は西武、東京メトロ、東急、横浜高速鉄道の運賃がそれぞれ単純加算され、1460円(ICカード1454円)、座席指定料金も西武(500円)、東京メトロ(210円)、東急(350円)が加算されて1060円となり、合わせて2520円かかる。

さらに鉄道とバスの乗り継ぎ割引となるとこれよりはるかに少ない。都内には都営バスが多く走っているが、都営地下鉄と都バスの乗り継ぎにおいて、定期券で乗り継ぐ場合にそれぞれの定期券運賃から約10%割引になる程度である(都バス同士の乗り継ぎはICカード利用で100円割引)。

首都圏のいわゆるフリーパスはどういう状況であろうか。主なものを挙げる。

●東京メトロ24時間券 600円(東京メトロ全線24時間券)
●都営まるごときっぷ(1日乗車券)700円〔都営地下鉄、都バス(多摩地域を含む)、都電荒川線、日暮里・舎人ライナー1日券〕
●東京メトロ・都営地下鉄共通一日乗車券 900円(東京メトロ・都営地下鉄全線1日券)
●JR都区内パス 750円(JRの都区内区間の普通列車1日券)
●東京フリーきっぷ 1590円(東京メトロ・都営地下鉄全線、都電、都バス、日暮里・舎人ライナーの全区間、JR線の都区内区間1日券)

このように各種フリーパスが用意されている。しかし価格設定は微妙だ。観光で1日にいろいろな箇所を回る場合にはかなりお得感があると思われるが、数社を乗り継いで目的地を1往復するような場合にはあまり価値はないだろう。また、私鉄を含めた首都圏全体のフリーパスは存在しない。自宅などの出発地がフリーエリアの外だとあまり利用価値はないように思われる。やはり、パリのゾーン制運賃、ソウルの通算制運賃等は消費者にとっては魅力であり、東京の鉄道・バス利用にはかなりの割高感があることは否めない。

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